2006年10月12日(木)「しんぶん赤旗」
「放送の自律」形骸化
控訴審結審 NHK番組改変で原告
東京高裁
「慰安婦」問題を取り上げたNHKの番組「問われる戦時性暴力」(二〇〇一年一月放送)が、自民党幹部の政治圧力で改変されたとして、市民団体がNHKなどを訴えていた訴訟の控訴審が十一日、東京高裁(南敏文裁判長)で結審しました。判決は、来年一月二十九日に言い渡されます。
原告バウネットジャパンは、百七十七ページの最終準備書面を提出し、共同代表の西野瑠美子さんが意見陳述。西野さんは、五年に及ぶ裁判を振り返りながら「『何事もなかった』としてNHKが何ら責任を取らないことになれば、それは『放送の自律』を形骸(けいがい)化し、『慰安婦』問題のメディアにおけるタブー化を促進する。『予算』を人質にNHKが政治家に呪縛(じゅばく)され続ける構図を固定化することになる」と述べました。
一審東京地裁は、〇四年三月、取材を担当した制作会社ドキュメンタリージャパンのみの責任を認め、百万円の支払いを命じました。原告側は、同年四月に控訴。〇五年一月十七日の第三回期日には結審が予想されていましたが、直前の同月十二日、朝日新聞が自民党の安倍晋三氏(現首相)、中川昭一氏(現政調会長)の番組介入を暴露し、番組にかかわったNHKの長井暁チーフプロデューサー(当時)が内部告発したことで、控訴審の様相は一変します。安倍氏らの関与、メディアと政治との距離に、裁判の論点は移りました。