2006年10月12日(木)「しんぶん赤旗」

主張

サラ金保険

命担保の高利貸しを許すな


 「人の生き血をすする」というのは高利貸しの所業を指してしばしば使われてきた言葉ですが、まさにこの表現がぴったりです。

 「命が担保」とかねてから批判されてきたサラ金の「消費者信用団体生命保険」(団信)で、借り手の自殺によって多額の保険金がサラ金会社に渡っている実態に初めてメスが入りました。

自殺率2割の社まで

 団信は、サラ金が生命保険会社と契約し、勝手に債務者に保険をかけ、債務者が死んだ場合は保険金で回収するという仕組みです。生命保険会社十九社が扱っており、サラ金など二十七社が契約しています。今年三月末の時点で、保険の対象にされた債務者は二千二百万人というぼう大な規模になっています。

 日本共産党の大門実紀史参院議員の要求で、金融庁が主なサラ金十七社について調査しました。この十七社が〇五年度に受け取った保険金は約三百億円で、うち自殺による受け取りは四十三億円でした。死因不明の死亡も多く、実際には自殺がさらに多く含まれるとみられます。サラ金大手五社の社別の内訳では、保険金受け取りで、件数、金額とも自殺が二割を超えている社もあります。社会的平均からみてもサラ金利用者の自殺率が非常に高く、貸金の保険金による回収が常態化していることを示しています。

 サラ金側は団信をかける理由を「遺族に債権回収が及ぶのを防ぐためだ」と説明します。サラ金は債務者に説明もなしに、勝手に保険をかけます。遺族に「死亡診断書を出せ」という連絡が突然きてトラブルになる事例が相次ぎ、遺族がサラ金を訴える訴訟も起きています。

 返済能力などおかまいなしに、高利で多額の金を貸し込み、違法不当な取り立てや恐喝、詐欺行為まで行って、債務者を追い詰めるというのがサラ金の常套(じょうとう)手段です。「最後は保険金で回収すればいい」という姿勢が、サラ金の無責任な貸し付けを助長するものになっていることは想像に難くありません。

 金融庁は九月、業界へのガイドライン改正で、サラ金が保険金による債務返済を迫ることは違法であることを明確にしました。しかし、対応はあまりに遅く、不十分です。

 保険を扱う生命保険会社にも問題があります。生保協会会長(第一生命社長)は「取り立てで自殺が助長されているということがあればそれは問題だ」とひとごとのようにいいました。責任を自覚し、保険の取り扱いそのものをやめるべきです。

 世論の強い批判で、アコム、武富士、プロミス、アイフルなど大手サラ金が団信保険を廃止する動きも広がっています。当然のことです。

 高利に追われて複数のサラ金から借金する状態に陥る多重債務被害の根源には、利息制限法の上限金利(15―20%)に違反して、出資法の上限金利(29・2%)との差の灰色金利で貸し付けていることがあります。サラ金は違法な高利貸し商法そのものをやめるべきです。

高金利引き下げが必要

 安倍晋三首相は衆院予算委員会で、「多重債務者の解決は私の内閣でも大きな課題」と答弁しました。ところが、政府が今国会に提出する貸金業法などの「改正」案は、灰色金利に五年間にわたるお墨付きを与え、一部の金利上限を引き上げてサラ金を焼け太りさせるものです。

 多くの悲劇を生む「社会の落とし穴」であるサラ金の規制へ、高金利引き下げこそが求められています。


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