2006年10月8日(日)「しんぶん赤旗」

大量破壊兵器 イラク戦争の口実崩れたのに

「正当化」する安倍首相の異常


 安倍晋三首相は、イラク戦争の大義とされたイラクの大量破壊兵器開発・保有問題について、開戦当時は「イラクに大量破壊兵器が存在すると信じるに足る理由があった」と答弁(三日の参院本会議)し、「正しい決定だった」とイラク戦争を正当化しました。しかし、開戦時にイラクに大量破壊兵器が存在しなかったことは米国政府自身の調査で判明し、戦争を主導した米英首脳でさえ誤りを認め、謝罪発言をしています。安倍氏の発言は、世界的にみても異常、異様です。

米国

大統領「攻撃決定責任ある」

 ブッシュ米政権は、大量破壊兵器開発の証拠を示せとの内外の圧力のもと、開戦後の二〇〇三年六月から、中央情報局(CIA)特別顧問を責任者とするイラク調査グループ(ISG)を現地に派遣しました。ISGは〇四年十月六日に約千ページの最終報告書を発表し、開戦時のイラクに大量破壊兵器はなく、開発計画さえなかったと結論づけました。

 ブッシュ大統領は〇五年十二月十四日のワシントンでの演説で、大量破壊兵器保有の情報が「誤り」だったことを初めて認めました。イラク戦争開始の理由とした「情報の多くが誤りだったことが判明したのは真実だ」と述べ、「私は大統領として、イラク攻撃を決定した責任がある」と語りました。

 戦争正当化に固執する立場は変わりませんが、もはや大量破壊兵器には言及していません。

 開戦直前の〇三年二月五日の国連安保理でイラクの大量破壊兵器開発の「証拠」を列挙する演説をしたパウエル国務長官(当時)自身は、〇五年九月九日に米ABCテレビのインタビューで、この発言を人生の「汚点」だと語りました。同氏は、「米国を代表して世界にそれを提示したのは私であり、そのことは常に私の経歴に残る。痛ましい」と述べました。(ワシントン=鎌塚由美)

英国

首相「誤った情報に謝罪」

 ブレア英首相は二〇〇四年九月二十八日、与党・労働党大会での演説で、「サダム(フセイン・イラク元大統領)が生物・化学兵器を保有しているとの証拠は間違っていたことが分かった。私はこれを認め、受け入れる」と発言。イラク参戦の理由にしたイラクの大量破壊兵器保有の情報が誤っていたことを初めて公式に認めました。

 同首相はまた、「誤っていることが判明した情報については謝罪できる」と述べ、謝罪を表明しました。

 〇五年九月二十七日の党大会演説では、「フセインを武力で除去する決定に反対する良心的な人々がいることを承知している」と述べ、武力による体制転覆に反対する人々に理解を示しました。

 また、「今日イラクは非常に厳しい状況にある」として、治安悪化を食い止めることを理由に英軍駐留を正当化する論議を展開しました。今年九月二十六日の大会演説でも、世界の安全をテロから守るためにという理由でイラク駐留を正当化しようとしました。しかし、開戦の経過には触れませんでした。(ロンドン=岡崎衆史)

欧州各国

ポーランド「作り話にだまされた」

「介入は正当化されない」イタリア

 東欧で最も親米的で、約二千四百人をイラクに派兵したポーランド。クワシニエフスキ大統領は〇四年三月十八日、記者団に対し、「大量破壊兵器で釣られたことはまったく不愉快だ。われわれは作り話でだまされた」と語りました。

 米英に次ぐ三千人の部隊をイラクに派遣していたイタリアでも撤退要求が高まり、今年四月の総選挙でベルルスコーニ政権が敗北。イラク撤兵を公約していたプローディ新政権は、六月に撤退を開始、年内に完全撤退する予定です。

 同首相は総選挙直後の仏紙ルモンドへの寄稿で、「イラク介入は不正であり、正当化されないと考える。いかなる大量破壊兵器もみつからなかったし、多国間主義的な正当性も一度として求められなかった」と指摘しました。

 〇三年三月十六日、ブッシュ米大統領、ブレア英首相との三者会談に出席し、イラク戦争開始決定に直接参画したスペインのアスナール首相。欧州最大規模の反戦デモが続くなか、〇四年三月の総選挙で敗北しました。

 イラク撤兵を公約に掲げたサパテロ新政権は、千四百人規模のイラク駐留部隊の撤退に直ちに着手し、同年五月に撤退完了しました。(パリ=浅田信幸)


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