2006年10月6日(金)「しんぶん赤旗」

多重債務の女性 被害者の会に相談

高利取り戻し 滞納税払う

行政にもメリット

兵庫・尼崎


 高金利のサラ金から利息を取り戻し、そのお金で滞納していた税金を一括して納めた――。兵庫県尼崎市でことし六月、税金や保険料の滞納が増えている市役所も驚く出来事があり、話題になっています。(井上 歩)


 滞納を解消したのは、尼崎市に住む生活保護受給者の女性(61)。女性は一九七一年ごろに夫の入院費のためサラ金から借り入れを開始。夫の収入とパート収入でやりくりしていましたが、昨年六月、夫が病気で倒れて行き詰まり、多重債務の被害者の会「尼崎あすひらく会」に相談。債務整理すると、サラ金二社から計約四百万円の過払い金を取り戻すことができました。

過払い金から

 サラ金の金利は年25―29%にものぼりますが、じつは民事上無効・違法なもので、借り手が利息制限法の上限金利(年15―20%)に基づいた債務整理を求めれば、払い過ぎた利息を取り戻せます。結果、元本が減少したり、過払い金が借り手に返還されます。女性は「たくさん利息を払っているとはまさか知らなかった」といいます。

 女性はサラ金への返済を優先していたため、市民税を二〇〇一年ごろから、国保料も〇二年ごろから滞納していました。取り戻した過払い金から、女性は滞納していた市民税約十四万円、国保料約八十万円を一括して支払いました。生活保護の受給も三カ月間、打ち切りました。

 女性は「ずっと病院にかかっていたので、国保料の滞納を一番心配していました。でもサラ金に払わなければいけなかったから、払えなくて。滞納分を払えて、スッとしました」と話します。

財政改善にも

 生活保護申請や滞納の支払いで女性の相談にのった日本共産党の松村ヤス子市議は「市の係も『そんなに返ってきたんですか』と驚き、それ以上にすごく喜んでくれました」といいます。

 松村市議は「生活相談で、滞納している人は必ずといっていいほど多重債務を抱えています」と話します。松村市議はことし六月の議会質問で、市税、国保料などの滞納と多重債務問題の関係を指摘。九月には「行政の多重債務者対策を充実させる全国会議」(大橋悦子代表幹事)メンバーの司法書士らとともに白井文市長と懇談し、多重債務についての職員の意識改革と、弁護士会、司法書士会と協力した行政の多重債務対策を求めました。

 松村市議によると、白井市長は「対策に大きな予算もいらないようだし、市民にとっても、行政にとってもメリットがある」と応じたといいます。

 松村市議は「市の財政は滞納で困っており、多重債務対策は自治体財政の改善、地域経済の活性化にも役立ちます。自治体の真剣な取り組みが求められます」と話しています。


貸金業者に利息五兆円

 金融庁の統計によると、貸金業者の消費者向け貸付残高は昨年三月末で約十九兆八千五百億円。年利25%とすると、約五兆円が、全国の借り手から外資などのクレジット・サラ金各社と貸金業者に流れていることになります。金利が利息制限法の上限(十万―百万円未満で年18%)まで下がれば年一兆円以上(約一兆四千億円)が地方に残ることになると指摘されています。


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