2006年10月6日(金)「しんぶん赤旗」
イラク戦争
いまだに正当化する異常
安倍首相なぜ固執する
安倍晋三首相は三日の参院本会議で、日本政府がイラク戦争を支持したことを「正しい決定だった」と強弁しました。国際社会から見て極めて異常であり、同首相がめざす集団的自衛権の行使の危険な狙いを改めて浮き彫りにしました。
少なくとも数万人のイラク国民の命を奪ったイラク戦争。その「大義」は、米国政府や議会の調査においても大量破壊兵器が存在しなかったこと、イラクの旧フセイン政権と国際テロ組織アルカイダとが無関係だったことが判明したことで、完膚なきまでに崩れました。
イラク戦争を支持した主要国のスペインでは二〇〇四年三月、イタリアでは今年四月の総選挙で与党が敗れ、政権が代わりました。これは、イラク戦争反対の世論が大きく影響したもので、スペインでは政権に就いたサパテロ首相が直ちにイラクからの軍撤退を表明し完了。イタリアのプローディ新政権も現在、段階的な撤退をすすめています。
侵略の張本人である米英でも事態は大きく変化しています。ブッシュ大統領は昨年十二月には大量破壊兵器保有という「情報は誤りだった」「私の決定のいくつかが恐るべき損失をもたらした」と述べざるを得なくなり、今年十一月の中間選挙では、与党共和党の候補者からもイラク政策への批判が語られています。英国では、ブッシュ大統領の盟友であるブレア首相が、〇九年とみられる総選挙を前に、来年の退陣を表明。この背景にも戦争反対世論があると指摘されています。
それなのに、なぜ安倍首相だけが異常な立場に固執するのか。
首相は八月末にイラク問題のセミナーで「一緒に活動している外国の軍隊が攻撃されたときに、われわれが黙ってその状況を見ていなければいけないのか」「今後こうした活動を続けていく上で真剣に考えていかなければならない」と表明しました。
集団的自衛権を行使できるようにし、米国がおこなう戦争に参加する国づくりを目指す安倍首相にとって、その「モデルケース」であるイラク戦争の誤りを認めることはあってはならないことなのでしょう。
しかし、戦争の継続とそれが生み出したテロの激化と宗派間対立で、現在も一日あたり百人が命を落とし、「国家崩壊の重大な危機」(国連のアナン事務総長)に陥っているイラクの現実自体が、安倍氏の立場がいかに許しがたいものであるかを物語っています。(小泉大介)