2006年10月6日(金)「しんぶん赤旗」

主張

イラク報告

不法な戦争が危険を拡散する


 ブッシュ米大統領が、米中間選挙(十一月七日)の最大の争点、イラク戦争とテロの問題で窮地に立っています。イラク現地の悲惨な混乱に加え、米議会、政府機関が戦争の口実を否定し、戦争でテロをなくせず逆に拡散している実態を示す報告を相次いで出しました。大統領の立場は、足元から揺らいでいます。

米議会、政府機関の警告

 米上院情報特別委員会の報告(九月八日)は、ブッシュ政権が強行したイラク戦争の口実を完ぺきに崩し不法さを改めて明白にしました。

 イラクのフセイン旧政権は、核・生物・化学兵器を「保有」していなかっただけでなく、アルカイダと関係をもつどころか逆に「脅威」とみなしそのメンバーを「追跡」していた。これが報告の核心です。

 九月末には、世界のテロ傾向を米国の十六情報機関が分析した「国家情報評価」報告書が報道され、ブッシュ政権が一部を公表しました。「反テロ戦争」で「世界はより安全になった」といい続ける大統領に根拠がないことを立証するものです。

 報告は、「イラク戦争が世界のジハード(聖戦)主義者の支持層を増やしている」と断じています。アルカイダを含むテロ・グループが「数」でも「地域的広がり」でも増大し、このままでは、「脅威はより多様化し、攻撃増加につながる」と警告しています。

 さらに、「聖戦主義者の拡散に対抗するためには、テロ指導者を捕え殺害する作戦をはるかに超えて、調整された多国間の努力が必要だ」としています。戦争一辺倒ではテロをなくせず、世界各国との協力した活動が必要であると認めたものです。

 ブッシュ政権は、国際的にも苦しい立場にあります。ともにイラクに攻め込んだ「盟友」英国のブレア首相は、厳しい批判をあびて来年中の退陣表明に追い込まれました。九月末には、「イラク戦争は、イスラム世界から過激派を引き寄せる役割を果たしている」との英国防省高官報告が報じられています。

 国連総会でも米国批判があいつぎ、米政府が押し立てたイラクのタラバニ大統領も、「地球規模での対テロ戦争を軍事力行使にだけ限定することは、テロを打ち破るのに十分でない」とのべるまでになっています。

 イラク戦争は正しかったといい続ける日本の安倍首相は、国際社会では異常そのものです。

 米英軍のイラク侵略戦争の誤りをはっきりさせ、米・占領軍のイラク撤退見通しをもつことは、テロ根絶のために避けられません。イラク人の78%が「米軍駐留が紛争を引き起こしている」と考え、71%が一年以内の米軍撤退を求めています(米メリーランド大調査)。

 テロは、どのような理由をつけても正当化されない犯罪です。しかし、特定の思想や価値観、宗教や文明に固有のものではありません。

多国間協力妨げるな

 テロ根絶には、テロを特定の宗教や文明と結びつけず、テロが生まれる根源の除去に取り組みながら、国連を中心に、国連憲章と国際法、国際人道法、基本的人権と両立する方法でおこなうことが不可欠です。

 そうでなければ、国際的な協力をつくることは困難です。

 ブッシュ政権は、「テロとのたたかいはイデオロギー闘争だ」と特定の思想や宗教との対立をあおり戦争を続けようとするのでなく、まずイラクから米軍撤退に踏み出すべきです。安倍首相のイラク戦争正当化と米軍支援が許されないのは当然です。


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