2006年10月3日(火)「しんぶん赤旗」
第37期将棋新人王戦U−26
四段同士、初の対決
決勝3番勝負 6日から
「しんぶん赤旗」主催
先輩棋士のプライドにかけて初のタイトルを狙う横山泰明四段(25)か。勝率で全棋士中トップを走る糸谷哲郎四段(17)が新人王となるか。若手棋士最強、将棋新人王の座を争う第37期将棋新人王戦U―26決勝3番勝負が6日から始まります。見どころは…。
振り飛車戦法、横山四段
“関西の怪物” 糸谷四段
第三十七期将棋新人王戦U―26決勝三番勝負は、ともに決勝に臨むのは初めての四段同士の対決となりました。
両者の公式戦対局は、この決勝三番勝負第一局が初めてです。
第一局は六日、東京・将棋会館でおこなわれます。立会人は第十三・十五期新人王の小野修一八段。
横山四段は準決勝で片上大輔四段を破って決勝に進出しました。横山四段が中飛車の戦法を採り勝ち上がりました。
糸谷四段は準決勝で宮田敦史五段の体調不良による不戦敗によって決勝に進出しました。今期新人王戦トーナメント途中の四月に四段昇段。優勝すれば、開幕時三段から新人王になった一九八七年の森内俊之四段(現名人・棋王)以来のことになります。
横山四段は振り飛車を得意戦法とする若手棋士です。四段昇段から四年、通算成績は79勝52敗で勝率は6割0分3厘。今年度に入ってからは11勝6敗と好成績を上げています(九月二十八日現在)。今年度の連勝ランキングにも6連勝で名を連ねています。
一方、糸谷四段は力将棋が持ち味で、プロ入り半年で早くも“関西の怪物”の異名をとっている新人です。通算成績は16勝3敗、勝率は8割4分2厘と全棋士中第一位(同)。六月から九月にかけて14連勝も記録しています。
東の期待の若手、横山四段と粘りの将棋の“西の怪物”糸谷四段の東西決戦にファンの注目が集まっています。
見どころは? 観戦記者に聞く
振り飛車対策
木屋太二さん 糸谷については三段出場から優勝まで行けば森内名人の例もあるように将来タイトルを争うことを予感させる新人王になる。横山は最近好調で彼の指す振り飛車はアマチュアにも人気があり、現代将棋の先端を行く戦型なので注目です。それにたいする糸谷流と呼ばれる対振り飛車作戦が見られるのではないか。
強運と好成績
小林正生さん 糸谷は形勢の悪い将棋も、勝ちに結びつける強運の持ち主です。独創的な棋風で、なかでも右玉が得意です。デビュー四年になる横山も毎年、各棋戦で好成績を上げ注目されてきました。横山の振り飛車にたいして糸谷が、どのような右玉戦法で挑むか興味深い。
キャリアに差
蝶谷初男さん 糸谷は勢いがあり、各棋戦で連勝中ですが、まだ未知数です。横山は、各棋戦で平均して力が発揮され、本棋戦でも決勝進出は妥当といえます。横山が、糸谷を特別に意識しなければ横山のキャリアが生きると思います。糸谷が横山の失着をとらえ、勢いに乗れば糸谷の流れでしょう。
十分研究し臨む
横山泰明四段の話
初の決勝で緊張していますが多くの人が見ているので恥ずかしくない将棋を指したい。ここまできたので優勝を狙いたいし、先輩棋士として負けられません。
糸谷四段は勢いがあって強敵だと思います。糸谷流の対振り飛車の独特の戦法があるので、そうなれば見たことのない形になるでしょう。しっかり研究して臨みたいと思います。
【横山泰明(よこやま・ひろあき)四段】東京・多摩市出身。桜井昇八段門下、二〇〇二年四段。
番勝負を面白く
糸谷哲郎四段の話
初めての番勝負ということで面白い結果を出したいと思っています。
横山四段は実力派、正統派なので思う存分競り合いたい。とくに中終盤で競り合った方が面白いと思います。
準決勝で今期出場者のなかでもトップクラスの実力を持つ宮田敦史五段と指せなかったのはとても残念でした。宮田五段の分までがんばりたい。
【糸谷哲郎(いとだに・てつろう)四段】広島市出身。森信雄六段門下、二〇〇六年四月四段。
新人王戦 今期から出場資格を二十六歳以下(十月一日時点)に引き下げ、「新人王戦U―26」として再スタート。本戦・決勝三番勝負の持ち時間も一時間短縮の三時間としました。
今期決勝三番勝負は、出場した日本将棋連盟の棋士、奨励会三段、女流棋士と第四十三期赤旗名人四十二人の頂点を争うたたかいです。
3番勝負の日程
第1局 10月6日(金) 東京・将棋会館
第2局 同12日(木) 大阪・関西将棋会館
第3局 同19日(木) 東京・将棋会館
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