2006年10月2日(月)「しんぶん赤旗」
ドイツの戦時中強制労働
補償金支払いが完了
150万人以上の被害者に
ナチス・ドイツ政権の下で強制労働に従事させられた人々への補償金支払いが三十日、完了しました。ドイツの補償基金「記憶・責任・未来」が実施してきたもので、これまで歴史上ほとんどなかった強制労働被害者への補償として注目されていました。
戦時中の外国人強制労働被害者への補償は日本でも問題になっていますが、ドイツでは一九九〇年代に大きな社会問題となりました。それまでに、強制収容所などでナチスの犠牲者となったユダヤ人や、シンティ・ロマ(ジプシー)、障害者などの「安楽死」犠牲者には補償がだんだんと実施されるようになってきましたが、強制労働被害者は取り残されていたからです。
ナチス・ドイツの支配下で強制連行・強制労働の被害を受けた人は千四百万人とも千五百万人ともいわれます。
第二次大戦中にはドイツの大企業が強制労働者を多く使っていたこともあり、ドイツ政府とドイツ企業・財界が折半で一千億マルク(一九九九年当時の為替レートで五兆五千三百八十億円)の基金「記憶・責任・未来」をつくり、二〇〇〇年から生存者に補償金の支払いを開始しました。
強制労働被害者の多かったロシア、ウクライナ、ベラルーシ、ポーランド、チェコ、イスラエルの六カ国とユダヤ人組織「対独物的請求ユダヤ人会議」などと補償契約を結び、百五十万人以上の被害者に一人約二千五百―七千五百ユーロが支払われました。
同基金は今後、強制労働被害の青年への継承や国民同士で迫害を許さない交流を進める機関として活動します。
〇四年に同基金のブロイティガム理事長(当時)は「強制労働被害者に補償をすることはこれまで歴史上ほとんどなかった。不正義があったことをドイツの政府と企業が認めたことを被害者は大きく評価している」と本紙に語っていました。
(片岡正明)