2006年9月28日(木)「しんぶん赤旗」
グアムでの米軍増強費用
「沖縄負担軽減」は偽り
米太平洋軍が作成した「グアム統合軍事開発計画」は、グアムを日本と並ぶ地球規模での“殴り込み”拠点にするため、必要な部隊、装備、インフラなどの概要を示したものです。
4軍の出撃拠点に
一面所報の海兵旅団の新設に加え、陸・海・空軍でも大増強が計画されています(表)。計画によると、現在は事実上、空軍と海軍だけが駐留するグアムに米四軍がそろい、総兵力は今の約六千五百人から将来的には約二万一千人に増強されます。
この計画の中心は一万人規模の海兵旅団の新設で、訓練施設の拡充や最新鋭の垂直離着陸機MV22オスプレイなどの配備も計画されています。
日本政府は在沖縄米海兵隊のグアム移転のためとして、家族住宅や隊舎、学校、インフラ(電力・上下水道)などの建設費用(六十・九億ドル=約七千百億円)を負担することになっています。これは政府が口実にする「沖縄の負担軽減」のためではなく、グアムの米軍大増強計画のための費用負担にほかなりません。
日米両政府は、在沖縄海兵隊一万八千人のうち八千人をグアムに移転して一万人を残すと説明しています。しかし、この説明はすでにごまかしであることが明らかになっています。
日本政府は、一万八千人という数字は机上の数であることを認めています。在日米軍司令部が示している在沖縄海兵隊の実兵力は一万二千―一万三千人。沖縄に一万人が残るとすれば、グアムに移転するのは実質的には二千―三千人にすぎません。移転する部隊も司令部が中心で、沖縄の基地負担の元凶である実戦部隊はそのまま残ります。
米太平洋軍の計画によると、グアムに創設される海兵隊司令部の規模は二千八百人。沖縄から実質的に移転される二千―三千人とほぼ一致します。
実現可能性も不明
しかも、この計画の実現可能性すらいまだ不透明です。米太平洋軍が示した計画はあくまで理論的な「想定」とされており、グアムに移転する海兵隊の具体的な部隊名も一切、明らかにされていません。
移転時期も「二〇一〇年以降」としており、米太平洋軍のリーフ副司令官は最近、「(部隊移転の)最初の大きな動きは最低六年間、期待できない」と述べています。
計画は海兵隊の部隊の種類ごとに移転の優先順位を付けていますが、沖縄から移転することになる司令部は一番最後になっています。
一方、政府は沖縄のキャンプ・シュワブ沿岸部(名護市)への新たな海兵隊航空基地の建設に向けた作業を着々と進めています。沖縄からグアムへの司令部移転すら行われないまま、沖縄での基地増強だけが進む危険があります。(竹下 岳)
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