2006年9月28日(木)「しんぶん赤旗」

主張

大企業減税

大もうけ財界に補助金は不要


 安倍首相は内閣発足後の記者会見で、「構造改革を加速させる」とのべました。その新内閣が手がける経済政策の最初の話題が、大企業向けの巨額の減税です。

 報道によると安倍首相は、法人税の「減価償却」の限度額を拡大することによって、初年度で六千億円規模に上る大企業減税を来年から実施する意向だといいます。

法人税率引き下げまで

 日本経団連は矢継ぎ早に減税要求を突きつけています。「減価償却」の拡充など当面の減税に加え、「税制の抜本改革」(つまり消費税増税)の際には法人税の実効税率そのものを引き下げるよう要求しています。

 尾身財務相は自民党の税制調査会の副会長として大企業減税の旗振り役を務めてきました。とどまるところを知らない財界の減税要求にこたえるための「強力」布陣です。

 会計上の「減価償却」は、毎年の企業の損益を平準化するために、建物や設備・機械にかかった費用を、耐用年数に応じて毎年一定の割合で費用として計上するやり方です。

 毎年の利益から差し引けるため、現実に設備に支出した年の翌年からは、税額を減らして企業の手元資金を増やす効果があります。日本の法定耐用年数は実際の耐用年数より大幅に短く、膨大な設備を持つ大企業には有利な減税策となっています。

 この「減価償却」をさらに拡充せよというのは厚かましい話です。

 日銀の統計から推計すると、大もうけと減税で、大企業を中心に企業には百兆円を超える余剰資金が滞留しています。ため込んだ資金が投資額よりもはるかに大きくなっているのであり、減税は実際の経済効果を考えてもまったくの無駄です。

 いま大企業はバブル景気の時の一・五倍という空前の利益を上げています。ところが至れり尽くせりの大企業減税を続けた結果、大幅に増えた利益とは逆に法人税収は十九兆円から十三兆円に減っています。

 政府の税制調査会でさえ大企業・大銀行向け減税の縮小を求める声が上がっています。政府税調の委員からは「政府は大赤字、個人はやっとトントン、黒字になっているのは企業だけ」と、いっそうの大企業減税への疑問も出ています。

 他方で安倍首相は、来年の参院選後には消費税増税の議論を始めると語っています。

 小泉「構造改革」は不安定雇用を大幅に増やし、大企業と大資産家に減税する一方、庶民には増税と福祉削減で犠牲を押し付けてきました。異常な大企業中心主義の政治が、働いても働いても生活保護の水準以下の収入しか得られない生活を多くの若者に強いています。住民税や健康保険料が何倍にも膨れ上がり、多数の高齢者を直撃しています。障害者や母子家庭など社会的に弱い立場に置かれた国民にしわ寄せする「改革」は、格差と貧困を大きく広げてきました。

 低所得層ほど負担が重い消費税を増税し、最高益を更新している大企業のために巨額の減税を追加することには何の道理もありません。

利益に相応の負担を

 自民党の中川秀直幹事長は二十六日のテレビ番組で、大企業減税の効果を強調し、減税は企業にとっては財政を出動する「補助金」と同じだと断言しました。

 大もうけの財界に「補助金」は必要ありません。財界のわがままを抑え、行きすぎた大企業減税を見直して、もうけにふさわしい負担を求めることこそ政治が果たすべき当然の役割ではないでしょうか。


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