2006年9月26日(火)「しんぶん赤旗」

タイ軍事政権

クーデターから1週間

批判封じへ規制強化


 【ハノイ=鈴木勝比古】タイの軍部がタクシン政権を倒した十九日のクーデターから二十六日で一週間になります。軍事政権は文民政権への移管を急ぐ一方、政治活動やメディアへの規制を強めており、内外からクーデターへの厳しい批判の声があがっています。

 タイ軍事政権は当初、二週間以内に民政に移管すると発表していましたが、早ければ二十七日にも新首相を任命すると伝えられます。

 その一方で、クーデターへの反対を封じるために五人以上の集会禁止、すべての政党の政治活動禁止を布告しました。二十四日には地方テレビ局を通じて「政党のすべての地方組織に活動の停止と政治集会の禁止」を命じました。

 軍高官はタクシン政権の支持基盤であった東北タイなどで地方の政治家が会合を開いてクーデターを非難していると語りました。

 五人の国家汚職追放委員会メンバーを任命し、タクシン氏の「不正蓄財」を徹底追及する方針です。タクシン氏の影響力を失墜させるねらいとみられます。タクシン首相の側近であったチャチャイ副首相と二閣僚の取り調べもすすめています。

 タクシン首相に反対してきたバンコクの市民運動はクーデターをめぐり二つの陣営に分かれています。民主市民同盟(PAD)の指導者の一人、ソンティ氏はクーデター発生直後からクーデターを支持、CNNテレビの二十五日のインタビューでも「積極的な意義があった」と述べています。

 一方、クーデターに反対する大学の講師や学生は軍事政権による規制の強化への反対を強めています。数十人の学生が二十二日に初めて街頭で「クーデター反対」の意思表示をしたのに続いて、タマサート大学などで政治討論会を予定しています。

 チュラロンコン大学の政治学講師カノクラット氏は「政治学講師としての私の立場は政治表現の権利と自由を守ることだ」と語りました。(タイ英字紙ネーション電子版二十五日付)

 英字紙バンコク・ポスト二十二日付(電子版)は「東南アジアの民主主義の標識としてのタイの評判は地に落ちた。タイの広く知られたイメージは荒廃した」と指摘しました。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)各国は「こうした手段で政府を代えるのは多くの人々の意に反する」(マレーシアのアブドラ首相)など憂慮を表明。フィリピンのインクワイアラー紙二十一日付(電子版)は「混乱し、挫折しながらの十数年間の民主化の発展を銃剣が切り裂いた」と指摘しました。


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