2006年9月25日(月)「しんぶん赤旗」
ブレア即時退陣へデモ
イラク参戦・格差拡大批判 英で6万人
与党大会が開幕
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【マンチェスター=岡崎衆史】英与党・労働党の年次大会が二十四日午後、中部マンチェスターで開幕しました。これに先立ち二十三日、大会会場周辺で最大六万人(主催者発表)が、「トニー(ブレア首相)、アウト(退陣を)」と声を上げ、首相の即時退陣とイラクとアフガニスタンからの英軍撤退を求めてデモ行進しました。首相の後継者に対しても、対米追随外交などブレア路線の転換を求めました。
イラクやアフガンへの軍駐留、医療や教育の民営化など新自由主義的政策を進めるブレア首相と労働党に怒りが強まる中、労働党大会に合わせたデモとしては最大規模となりました。
ウェールズのカーディフから列車で三時間半かけて駆けつけたロバート・ホルバッハさん(24)は、「ブレア首相が決めたイラク参戦によって英国は多数の人々を敵に回した。特に内外のイスラム教徒の怒りを強め、英国を含む世界の安全を奪った」と指摘。地元マンチェスターの大学生トビアス・エツオルドさん(31)も、「軍事力では何も解決しない」と、政府の外交政策とテロ対策を批判しました。
バーミンガム近郊からバスで来た中学校教師(54)は、「ブレア政権は教育や医療の民営化を進めようとしている。社会の格差を広げるような政治をこれ以上許してはおけない」と語りました。
デモの前後の集会では労働党国会議員も発言。ミーチャー議員は「イラクの米英軍は内戦を防ぐどころか逆にあおっている。外国軍が駐留する限り民主主義も安全回復もありえない」と述べ、英軍の即時撤退を要求。コービン議員は「首相はイラクが大量破壊兵器を保有しているとうそをついて英国を戦争に巻き込み、多数の犠牲者を出した。今こそ責任を取らせるべきだ」と、首相の即時退陣を求めました。
党大会は二十八日まで。ブレア首相は二十六日に演説します。
解説
有力後継者にも圧力
ブレア首相は一九九七年以降、総選挙で連続三回勝利したものの、二〇〇三年のイラク参戦後は急速に支持が低下しました。教育や医療の一部民営化政策、テロ対策の名の下での市民の自由の規制などをめぐって与党内からも批判が強まったことを契機に、さらに支持率が下降。国民の支持を失った首相は今月に入り、来年秋の労働党大会までに辞任することを明らかにしました。
大会では、ブレア首相の退陣時期とともに後継者問題が一つの焦点。最も有力なブラウン財務相は今のところ、内政、外交ともにブレア路線との違いがほとんどないため、首相が代わるだけで政策は同じだとの批判が内外から出ています。
また、最近の世論調査では最大野党・保守党のキャメロン党首がブラウン氏の支持率を上回っているため、ブレア路線に代わる新しい路線の打ち出しを求める声も高まっています。
デモの主催団体「戦争ストップ連合」のジョン・リーズ氏は集会で、「もしもブラウン財務相がイラクとアフガニスタンの軍駐留を支持するのなら、ブレア首相同様に退陣運動が起こるだろう」と発言。同連合のリンゼイ・ジャーマン氏も対米追随を改め「平等と正義に基づく外交政策」を進めるよう政策転換を求めました。
(マンチェスター=岡崎衆史)