2006年9月25日(月)「しんぶん赤旗」
安倍新総裁を海外各紙が論評
シンガポール紙
右派の利益への迎合
【ハノイ=鈴木勝比古】シンガポール紙ストレーツ・タイムズは安倍晋三官房長官が自民党総裁に選出される直前の十九日付の論評で、安倍氏が第二次世界大戦での日本の侵略を認めず、「愛国心」を育成する教育改革や「平和憲法」の改定を進めようとしていると強い警戒を示しました。
「安倍は右派の支配を維持できるか」と題する同紙東京特派員の論評は「自民党が安倍を首相にする最大のリスクは彼が試練を積んでいないという事実ではなく、彼が自分の人気と影響力を広げるためにいつも右派の利益に迎合する用意をしていることにある」と指摘しています。
そして、安倍氏は「日本の東アジア、東南アジアでの侵略戦争を認めることを拒否し、日本の軍事侵略の罪を認めるかと質問されても、『歴史家の判断にゆだねる』と答えるにとどめている」と紹介しています。
ロシア紙
「軍の強化」に警戒感
安倍晋三自民党総裁の誕生についてロシア紙ブレーミャ・ノボスチェイ二十日付は「新たな急進的な日本 新首相は歴史の書き換えと軍の強化を行うだろう」との記事を掲載し、警戒感を示しました。
記事は、安倍氏が日本の第二次大戦開始を「東アジアの西側帝国主義列強からの解放を目的としたもの」と主張したり、戦時中の日本の指導者らをA級戦犯とした東京裁判を否定していることを紹介。同氏がそうした主張を続けるなら「日本は近隣諸国だけでなく米国との関係を悪化させるだろう」と予測しています。
さらに、安倍氏の歴史観が学校教科書のナショナリズム的傾向を強める可能性があると指摘するとともに、ボランティア活動の義務化という同氏の提唱が、「第二次大戦中の生徒らの勤労動員を思い起こさせる」との批判を呼んでいることも紹介しています。
英紙
侵略認めない歴史観
英紙フィナンシャル・タイムズ(十六、十七日付)は特集記事を掲載し、改憲をめざす安倍氏の歴史観に注目しています。
記事は、安倍氏の祖父故岸信介氏が戦争中の東条内閣で大臣を務め、戦後もA級戦犯容疑者として投獄された後、首相として日米安保条約の強化・改定を行った政治家であったことに触れ、こう述べています。
「安倍は、祖父の記憶にまとわり付く戦犯の汚名に憤慨する。彼は日本のアジア侵略が西欧の帝国主義よりも悪いとか、第二次世界大戦では日本だけに罪があるという考えを疑う。彼は日米同盟の強力な支持者だが、東条らが糾弾された(東京)裁判を米国の見せしめ裁判ととらえ、その正当性に疑いをはさむ」
そして、「靖国神社を安倍が参拝するのは、日本の戦争は不名誉なものではなかったという信念があるからだ」と指摘しています。