2006年9月25日(月)「しんぶん赤旗」
第39回赤旗まつり
変幻自在。 それが伝統
私も出演します
浪曲師 国本 武春さん
5日午前 中央舞台
肩書は浪曲師。でも、それだけでは表現できません。変幻自在。たとえば「大忠臣蔵」。出だしはロックです。「別れ」の場面はバラードに。「討ち入り」場面はラップにブルース、河内音頭風、最後はロックンロール、さまざまな音楽要素を繰り出し、確かな語りが貫かれる。楽しさ満載です。
「浪曲はもともとアドリブなんです。曲師(三味線の伴奏者)とのやりとりで節も固まっていく。話も歌舞伎や落語などのいいとこ取り。流行もどんどん取り入れた。受けてなんぼ、という他の伝統芸能にはない一種の潔さ、パワーがあるんです」
今の音楽を大胆に取り入れる武春流は、浪曲の伝統そのもの、なのかもしれません。
「聞いてもらう、だけじゃつまらない。浪曲には最後の二、三分にヤマ場があるんですが、そこに行くまで、遊びながら、友達になりながら参加してもらいたい」。このエンターテインメント精神も武春流。
両親は浪曲師。「親がやっているというだけで浪曲には嫌悪感を持っていました」。中学、高校はアメリカの「ブルーグラス」に浸っていました。一度は俳優を志しますが、一人芸にあこがれ、寄席通い。「親に内緒で買った『浪曲名人集』が浪曲と向き合った最初。まったくわからなかったけれど、何回も聞くと、これが面白い」
浪曲の世界に入ったのは十九歳のとき。古典の曲をこなすと同時に、三味線に和音を取り入れる独特の奏法と弾き語りというスタイルを確立します。他ジャンルのアーティストとも旺盛に共演、宮本亜門ミュージカルに主演するなど多彩な活動。NHKテレビ「笑いがいちばん」のテーマ曲は武春作品です。そしていま力を入れているのが少年時代に熱中した「ブルーグラス」。武春ワールドは広がるばかりです。さて、「赤旗まつり」では―。
「語り物は『大忠臣蔵』になると思います。野外ですから、みんながコーラスできるような盛り上がれる舞台にしたい。浪曲の古いイメージは取り払ってもらいます」
文 荻野谷正博
写真 佐藤 光信