2006年9月25日(月)「しんぶん赤旗」
患者負担
70歳以上も3割
自公の医療改悪、来月実施
今年六月の国会で自民、公明両党が強行成立させた医療改悪法にもとづく患者負担増が、十月から実施されます。七十歳以上の高齢者を中心に、医療費の窓口負担の大幅値上げや療養病床入院患者の食費・居住費の負担増、高額療養費制度の限度額引き上げなどが内容です(表)。
七十歳以上の高齢者のうち「現役並みの所得」がある人は、病院や診療所の窓口で払う患者負担が、現役世代と同じ三割負担に引き上げられます。現行は二割負担です。
「現役並み所得」とは、課税所得額が年間百四十五万円以上で、年収が単身世帯で三百八十三万円以上、夫婦二人世帯で五百二十万円以上の人です。対象者は七十歳以上の11%、約二百万人にのぼります。
「現役並み所得」の年収基準は八月に引き下げられたばかり。新たに約九十万人が「現役並み所得」とみなされるようになりました。この人たちは、七月までの一割負担が八月から二割、十月から三割と、三倍にはね上がります。
年収が基準額に満たない人でも、課税所得が基準の百四十五万円以上の人は、所定の書類で申請しないと「現役並み所得」として扱われてしまうので、注意が必要です。
■来月から変わる制度
▽現役並み所得のある70歳以上の
高齢者の窓口負担
2割→3割
▽70歳以上の療養病床入院患者の食費、居住費の負担増
▽高額療養費制度の自己負担限度額引き上げ
▽埋葬料支給
1カ月の賃金相当額(最低10万円)→一律5万円
▽出産育児一時金
30万円→35万円
▽「特定療養費制度」を廃止し、「混合診療」の本格的導入に向けた「保険外併用療養費制度」を創設
来月から医療費負担増
長期入院 食費増・居住費も
高額療養費 限度額引き上げ
1日に千700円
長期にわたって治療が必要な、療養病床に入院する七十歳以上の高齢者にも新たな負担が待ち受けています。
いまの制度では、高齢者が入院すると、一割負担(「現役並み所得」の人は二割負担)のほかに、一日あたり七百八十円の食費を負担します。
十月から療養病床では、これが一日あたり千三百八十円に値上げされます。さらに、居住費(光熱水費)の負担が新たに追加されます。一日につき三百二十円です。食費と居住費を合わせると、負担額は一日に千七百円。一カ月(三十日間)入院すれば、五万一千円もの負担となります。
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低所得者の負担額は、これより低く設定されています。(表上)
介護保険の施設では、昨年十月から食費・居住費が入所者の自己負担となりました。この結果、退所に追い込まれる人が相次いでいます。厚生労働省の調査でも、退所者数は千三百人以上にのぼりました。今回の改悪はこうした事態を医療分野にまで広げるものです。
70歳未満の人
高額療養費制度の限度額も引き上げられます。(表下)
同制度は、重い病気や慢性的な病気の人の負担軽減を目的にしたものです。自己負担に限度額を設けて、医療費が高額になると限度額を超える分を払い戻します。
十月からは、七十歳未満の一般の場合、限度額の定額部分を月八万百円に値上げ。これに医療費によって変わる定率部分が上乗せされます。「上位所得者」も、同様に定額部分が月十五万円に引き上げられます。
「上位所得者」の対象も、十月から拡大されます。健康保険の場合、現行の月収五十六万円以上から五十三万円以上に。国民健康保険では、現行の年間所得六百七十万円以上から、六百万円以上に広がります。
七十歳以上の高齢者についても、「現役並み所得者」の限度額が引き上げられます。
さらに、人工透析を受けている患者の負担限度額も上がります。いまは月一万円ですが、七十歳未満の「上位所得者」については、月二万円に引き上げられます。
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埋葬料は減額
健康保険や共済組合の加入者(被保険者)が死亡した場合、葬祭費用の一部として保険から支給される「埋葬料」が減額されます。現行は一カ月の賃金相当額(最低金額十万円)が受け取れますが、十月からは一律五万円になります。
出産育児一時金は、現行の三十万円から三十五万円に増額されます。
混合診療本格化
また、公的保険のきく医療と保険のきかない医療を組み合わせた「混合診療」の本格的導入に向け、これまでの「特定療養費制度」(高度先進医療や差額ベッドなど)を再編成します。新たに「保険外併用療養費制度」を設け、将来は保険導入の対象とする「評価療養」(先進医療など)と、将来にわたって保険の対象にしない「選定療養」(差額ベッド、制限回数を超える医療行為など)に区分けします。