2006年9月24日(日)「しんぶん赤旗」
社会リポート
通信業界何でもあり
規制緩和で悪質業者次々
利用者・出資者に混乱
通信業界で利用者を混乱に陥れる事態がつづいています。インターネット電話(IP電話)の急成長企業といわれた「近未来通信」が所得隠しで追徴課税をうけ、昨年末には格安電話サービスを提供していた平成電電が破たん。混乱の引きがねとなったのが、あらゆる業者の参入とルールなき運営を許した「規制緩和」です。(芦川章子)
「初めの説明とあまりにもかけ離れている。だましにちかい」。太田清二さん=仮名=は、「近未来通信」の運営方法をこういいます。
同社は、「電話の利用料から配当する」として投資家から資金を集めています。太田さんが出資したのは二年前。電話の中継局の設備をもつ「オーナー」として、設備費など約千三百万円を出資。さらに毎月三十万円の設備運営費を払い続けました。
「半年ほどで収支がプラスになる。安定すれば月収は八十万円以上」と勧誘時に説明した同社。しかし、実際に収入が手に入ったのは一年後。金額は説明の半分以下でした。
不透明な経営
「自分で事業を」と貯金をはたいた太田さん。「初めはそんなにいい話があるのかと思った」。大手新聞やテレビで何度も見る派手な広告や、事業の成長を確約するかのような勧誘に、「信用してしまった」といいます。
同社は、配当の大半を他の投資家からの出資金で賄う「自転車操業」状態であると報じられています。その一方で、もうけを隠して受けた追徴課税は約二億五千万円。経営の不透明さが浮かび上がります。
似たような手口で、投資家から出資を募っていたのが平成電電です。個人投資家一万九千人から四百九十億円を集めたまま倒産。民事再生法を申請する三日前まで出資者を募集。「計画倒産ではないか」と非難が殺到しました。
両社以外にも危うい運営をおこなう新規参入業者は後をたちません。総務省のもとへは「契約したが電話がつながらない」といった苦情が寄せられているといいます。
増える業者数
こうした業者とやり口がなぜ出てくるのか。背景にあるのが規制緩和です。
一九八五年、日本電信電話公社が民営化され、NTTが誕生。国は、度重なる法改定でつぎつぎと規制を緩和。原則どんな業者でも参入できるようになりました。電気通信事業者数は、二百十六社(八五年)から一万三千六百二十二社(二〇〇五年)にまで増えています。
総務省の監督体制も激変。参入前に厳しく業者をチェックする体制から、「事後チェック体制」へと変更しました。
有象無象の業者が展開する何でもありの「通信サバイバル」―。総務省はこうした事態を「自由な参入と競争が市場を活性化する」と評価。「投資にまでは、うちも口を出せない」(総務省総合通信基盤局)といいます。各事業者の利用者数や財務状況について、大手をのぞき総務省も把握していません。
太田さんはいいます。「総務省がもっと厳しく監督し、情報公開していれば、こんな業者は出なかった。被害が増えないうちに対応してほしい」