2006年9月22日(金)「しんぶん赤旗」
教育基本法改悪を先取り 都教委
解説
二十一日の東京地裁判決は、東京都教育委員会が二〇〇三年以来おこなってきた「日の丸・君が代」の強制が教育現場の自主性を踏みにじり、思想・良心の自由を侵害するものであると明確に判断しました。原告側弁護団の澤藤統一郎副団長は「教育基本法が生きているからこその判決。憲法・教育基本法がどんなに大切かを示した判決です」と強調しました。
都教委はこの間、強制に従わない教職員のべ三百四十五人を処分してきました。教師が「内心の自由」について説明することさえ禁じ、生徒にも強制が及んでいます。「愛国心」を教育の目標として子どもに押しつける教育基本法改悪の先取りです。
都教委の強制によりフロア形式、対面式など各学校が創意を凝らして実施してきた卒業式ができなくなりました。養護学校では車いすの生徒を壇上にあげることが強制され、スロープをつけた学校も出ました。
現場の教師にものをいわせず、都教委のいうがままに行動させるやり方は学校運営の全般に及んでいます。職員会議で挙手や採決によって教職員の意見を確認することすら禁止され、学校から自由がなくなりました。
こうしたなか、不起立で処分された人、自分の意思に反して起立した人、「日の丸・君が代」自体は認めるが強制は許せないという人などさまざまな立場の人たちが、思想・良心の自由、教育の自由を守ることを一致点に共同してたたかってきたのがこの「予防訴訟」です。
判決は「日の丸・君が代」について「皇国思想や軍国主義思想の精神的支柱として用いられてきたことは否定しがたい」と指摘。掲揚・斉唱にさまざまな意見を持つ人がいることを認め、教職員は思想・良心の自由にもとづき、起立や斉唱、伴奏を拒否する自由を有しているとのべました。
弁護団は「思想・良心の自由の重要性を正面からうたいあげたもので、わが国憲法訴訟上、画期的なもの」とする声明を発表。原告らは都教委に10・23通達撤回を求めていくことにしています。
「日の丸・君が代」強制に象徴される都の教育の実態は、教育基本法改悪の先にあるものが何かを示しています。判決がその不当性を断罪したことは大きな意味を持ちます。(高間史人)