2006年9月22日(金)「しんぶん赤旗」

主張

サラ金規制

骨抜き、焼け太りは許されない


 貸金業規制法改正で混迷を深めていた自民党が、臨時国会に提出する法案を了承しました。

 異常な高金利で複数のサラ金から借金を重ねる多重債務被害を無くそうと、高金利の引き下げを求める世論と運動が広がり、金融庁の有識者懇談会でも金利引き下げの意見が大勢となる一方、最終盤で業界の意向を受けたサラ金派議員が激しく巻き返しました。同案にはこうした事情が色濃く現れています。

長期の「抜け穴」認める

 今回の金利引き下げで最大の焦点となったのは、刑事罰のある出資法の上限金利年29・2%を利息制限法の上限金利(15〜20%)に引き下げ、この間の灰色(グレーゾーン)金利で暴利をむさぼるサラ金に効果的な規制をかけることでした。

 この間の社会的な議論を通じて灰色金利の廃止は動かしがたい合意となっていました。が、サラ金業界は最後まで抜け道をつくることに固執し、金融庁、自民党はそれにこたえようとしました。

 結局、出資法の上限金利引き下げまでの期間を三年間という長期にし、「少額・短期」の融資に25・5%という高金利を適用する特例を二年間にわたって認めています。これにより法「改正」後五年間にわたり、灰色金利が温存されます。いまも日々、高金利被害が広がっているのに、あまりにも悠長な話です。

 利息制限法の上限金利の金額区分変更で一部の金利が引き上げられたことも重大です。現行の元本十万円未満は年20%、同十万円以上百万円未満は年18%、同百万円以上年15%という区分を、それぞれ五十万円未満、五十万円以上五百万円未満、五百万円以上の三つの区分に変更します。その結果、サラ金の個人向け融資でもっとも多い五十万円までの融資で現行より2ポイント、商工ローンなどの中小企業向けでもっとも多い百万円―五百万円の融資で3ポイントの金利引き上げになるのです。

 金利引き下げが求められているときに、主力の融資で合法金利を引き上げてやるというのでは、サラ金業界は焼け太りのようなものです。

 来年一月を期限とする貸金業規制法改正をめぐり、日弁連をはじめサラ金被害者救済に向けた運動が全国に広がり、都道府県議会では八割、市議会では過半数が金利引き下げを求める意見書を可決しています。金融庁の懇談会では、金利引き下げを求める意見が、高金利温存を求める業界代表を圧倒しました。

 日本共産党が全国ですすめる生活相談活動では、サラ金被害者の救済が大きな課題です。党国会議員団は、高金利規制を正面から求める追及を重ね、小泉首相でさえ「高金利をむさぼっている業者に被害を受けないような対策を講じなければならない」と答えました。

いっそうの世論を

 世論に包囲されたサラ金業界が頼りにしたのは、政界との結びつきです。公表された政治資金収支報告書だけでも、サラ金業界は自民党国会議員二十三人と各派閥、民主党のパーティー券を買い、公明党に多額の機関紙購入代を支払っています。

 こうした政界工作が功を奏したとすれば、文字通り金で法案を買う動きであり、断じて容認できません。

 サラ金規制の強化では、金融庁が生命保険での返済強要に罰則をくわえることを決めるなど、世論と運動を反映する前進も生まれています。

 改正案の国会審議に向け、実効ある金利引き下げ実現へ、さらに世論を広げるときです。


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