2006年9月17日(日)「しんぶん赤旗」
政府の「新医師確保対策」
医学部定員増 10県のみ
“マクロ的に充足”認識に誤り
医師不足に対応するとして、政府の「地域医療に関する関係省庁連絡会議」が八月末に決定した「新医師確保総合対策」。二十四年ぶりに大学医学部の定員増を盛り込んだとはいえ、その内容は、あくまでも「暫定的」措置であり、実施県もわずか「十県」のみ。しかも、対象県の選び方にも疑問の声が上がっています。
総合対策では、「医師不足県」の医師増をはかるとして、青森、岩手、秋田、山形、福島、新潟、山梨、長野、岐阜、三重の十県で、大学定員を最大十人(二〇〇八年度から最長十年)上乗せすることを認めました。
問題は、対象県の選定基準です。政府は、第一の基準を「人口十万人にたいする医師数二百未満(〇四年度)」としました。この基準をあてはめれば、十県以外に茨城(人口十万人当たり医師数百五十人)、埼玉(同百三十四・二人)、千葉(同百五十二人)、神奈川(同百七十四人)、静岡(同百七十四・九人)、愛知(同百八十四・九人)の六県が含まれるはずでした。とくに、「十万人当たりの医師数」では、埼玉は全国最少の四十七位、茨城は四十六位、千葉は四十五位という「最低ランク」に位置する県です。
ところが、この六県は除外されました。政府が、「同年の百平方キロメートル当たりの医師数六十以上の県を除外」というもう一つの選定基準を持ち込んだためです。
なぜ、面積で図る基準を加えたのか――。厚生労働省は「一つの判断」としか説明しませんが、除外された六県はどこも深刻な医師不足に悩まされており、実態に見合った基準とはいえません。
問題の大本にあるのは、政府が「マクロ的には必要医師数が充足」しているという大前提にたっているためです。医師不足を解消するためには、政府がこの認識を改め、抜本的な医師数増をはかる政策に転換することが急務となっています。