2006年9月16日(土)「しんぶん赤旗」
重度障害者の医療費助成制度
各地で後退相次ぐ
11県で自己負担導入
都道府県・市町村が実施する重度心身障害者(児)医療費助成制度の後退が相次いでいることが、十五日までに障害者団体の調査で分かりました。昨年七月と比べ、十一県で新たに医療費や入院中の食費に自己負担を導入、または導入予定です。調査結果は十六日、東京都内で開くシンポジウムで発表されます。
調査はNPO法人「日本障害者センター」が四十七都道府県、十四政令市、三十五中核市を対象に実施。昨年七月に行った調査と比較しました。
それによると、都道府県で、医療費自己負担を導入したのは五県(別表)。山形県では、制度適用に所得制限が導入されました。また、入院中の食費自己負担の助成は山形、山梨、岐阜、徳島、佐賀、大分、沖縄の七県で廃止されました。医療費の自己負担がすでに導入されていた自治体で、新たな負担増になるところもありました。
一方、後退が相次ぐ中、富山県では軽度障害者助成制度の廃止や窓口でいったん医療費自己負担分を支払い、その後払い戻しを受ける償還払い制度を導入しようとしていましたが、日本共産党と県民や患者・障害者団体の運動などがあり見送られました。
障害者の医療費はこれまで、医療保険の自己負担分を更生医療など公費負担医療制度で国が助成。さらに、都道府県・市町村が上乗せ助成してきました。都道府県・市町村の助成は、障害と直接関係がなく、国の制度では対象とならない病気やけがまで対象となっています。
国は四月から、これまで所得に応じた負担だった更生医療、育成医療や5%の定率負担だった精神障害者通院医療のかわりに自立支援医療を実施し、原則一割負担を導入しました。自治体での相次ぐ後退はこの影響に地方「行革」が重なった形となっています。
全国心臓病の子どもを守る会の水谷幸司事務局次長は「国の制度では助成の対象にならない風邪などの病気でも、障害者の場合手遅れになれば命にかかわることになる。自立支援法施行後、各地で負担軽減策がとられているが、医療費の軽減策は含まれないどころか後退している。後退は受診抑制につながり軽視できない」と話します。
十六日のシンポジウムは午後一時から板橋区立文化会館大会議室で。医療制度全般についての議論が行われます。
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