2006年9月15日(金)「しんぶん赤旗」
庶民大増税 なぜなぜ問答
財源論編 8
Q そんなに日本の財政は悪いの?
増税論者の中には、財政悪化の状況を誇大に宣伝する場合があります。これには要注意です。
資産あり
最近よく、「国の借金が八百兆円突破」「地方をあわせれば千兆円」といった報道が目立ちます。前回、「国と地方の債務は七百五十兆円」と書きましたが、それよりはるかに大きな数字が一人歩きしています。でも、これは不正確です。
八百兆円という数字は、財務省が三カ月ごとに公表している「国債及び借入金現在高」のデータです。今年三月末で八百二十七兆円です。
この中には「財政融資資金特別会計国債」というものが、百三十九兆円も含まれています。これは、郵便貯金や年金の積立金を原資として行っていた財政投融資事業を、国債を原資にして行うように変更したために、二〇〇一年度以降毎年増えてきたものです。このお金は、公団・公庫や地方自治体などへの融資として活用されています。
また、九十七兆円の「政府短期証券」はほとんどが、いわゆる「外為証券」で、円高防止のための「ドル買い」に使われたものです。買ったドルは米国債などの形で保有されています。
この二つは、債務に見合った資産があるわけですから、赤字国債などと同列に並べて「借金」と計算するのは適切ではありません。
抑制が要
「国と地方の税収は八十兆円、七百五十兆円の借金を返すには、飲まず食わずでも十年もかかる」という議論もあります。家計と比較して「年収の十倍ものローンを組んだら、もう破産だ」という人もいます。一見わかりやすい議論ですが、これも不正確です。
家計の場合は、寿命や定年を考えると、住宅ローンは最長でも三十五年。その間に全額返済しようと考えれば、「年収の五倍」くらいが限度でしょう。でも、国には寿命も定年もありません。別に、二十年とか三十年のうちに借金を全部返す必要などありません。政府だって、そんなことは思っていません。
必要なのは、「借金を全部返す」などということではなく、「借金があまり増えないように抑制」して、経済成長にともなって「対国内総生産(GDP)比で見た債務残高が減っていく」ようにすることなのです。(つづく)
|