2006年9月15日(金)「しんぶん赤旗」

主張

総裁選論戦

“あいまい”通し本音が見える


 自民党総裁選に立候補した、安倍晋三官房長官と谷垣禎一財務相、麻生太郎外相の間で、論戦が繰り広げられています。違いがないのか出せないのか、論戦としての盛り上がりはいまひとつですが、その原因のひとつは、“本命”といわれる安倍氏の発言に、明確さが欠けていることです。しかし、“あいまい”だとか「ステルス(見えない)」だとかいわれるその言動も、安倍氏の危険な本音まで隠すのは不可能です。

村山談話継承もいわず

 安倍氏の“あいまい”ぶりを象徴しているといわれるのは、歴史認識についての発言です。安倍氏は、日本の「侵略戦争と植民地支配」について「国策」の誤りを認め、「おわびと反省」を明確にした戦後五十年にあたっての村山首相談話について、「歴史的な談話」「精神は引き継ぐ」とはいうものの、踏襲するという明言は避けつづけています。

 村山談話は自民党も加わった内閣で決定され、小泉内閣を含めその後の内閣で継承されてきました。安倍氏がその継承を明言しないのは、侵略戦争と植民地支配を誤りと認めた歴史認識を変更しようとくわだてているためです。安倍氏が侵略戦争だったかどうかの評価は、「歴史家に任せるべきだ」とごまかすのも、「侵略」の事実をあいまいにするためです。

 安倍氏は侵略戦争を「正しい戦争だった」と正当化する靖国神社への首相の参拝についても、参拝するともしないとも明言しません。しかし、安倍氏はもともと首相の靖国参拝を支持し、自らもことし四月、官房長官として参拝したといわれます。どんなにあいまいにことをすまそうとしても、その本音は隠せません。

 憲法問題で安倍氏は、「新しい憲法の制定」を公約の第一に掲げ、「五年」以内と期間を区切って、改憲を実現する考えを明らかにしました。改憲の中身や具体的な段取りについてはあいまいにしていますが、もともと憲法や教育基本法は「占領時代の残滓(ざんし)」といってはばからない右翼的な考えの持ち主です。現憲法を否定する安倍氏の本音は明白です。

 憲法問題で安倍氏がきわめて危険な考えの持ち主であることは、集団的自衛権の「行使」をめぐって、内閣法制局の見解で憲法上禁止されているといわれるのは、「絶対概念」でなく「量的概念」だ、行使できないのは「必要最小限」をこえるものだけだなどといいだしていることでも明らかです。集団的自衛権の行使というのは、日本が直接攻撃されなくても、同盟国・アメリカのために共にたたかうということです。明文改憲を待たず、解釈改憲もこれまでの限界を突破して、アメリカの無法な戦争への協力要求に応えていこうという、危険なねらいは明らかです。

消費税増税踏み込む

 安倍氏は経済政策では、「イノベーション」だの「再チャレンジ」だのと、カタカナ語を乱発して煙に巻く作戦です。しかし基本は、格差と貧困を拡大した小泉「構造改革」路線を継承し、経済成長には「税制で投資を促し、規制をはずす」という、大企業の利益最優先の立場です。

 社会保障は「給付と負担のバランスをしっかりとっていく」と負担増を肯定しています。消費税増税でも、「二〇〇七年秋」には「議論する」と明言しました。来年の参院選後は増税を一気に進める魂胆です。

 “あいまい”に隠れた安倍氏の本音は、国民にとって危険なものばかりです。新政権が発足しても、国民との矛盾を免れるはずがありません。


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