2006年9月14日(木)「しんぶん赤旗」

日本橋またぐ首都高「地下化」案

「景観改善」の裏で巨大開発


地図

 江戸時代の五街道の起点として、国の重要文化財に指定されている東京都中央区の日本橋。橋の真上をまたぐ首都高速道路を地下に移す計画が進行しています。有識者会議「日本橋に空を取り戻す会(日本橋みち会議)」は十五日に小泉純一郎首相に「地下化」を求める報告書を提出する予定ですが、「景観改善」の名目とは別の理由が浮かびます。

5千億円規模で

 日本橋みち会議(委員長・伊藤滋早稲田大教授)の提言案などによれば、計画は、中央区・江戸橋から千代田区・竹橋までの首都高約二キロメートルを地下に潜らせるというものです。あわせて同区間の下を流れる日本橋川の川岸から幅五十―六十メートルにある建物も撤去。建物を低層化した「オープンスペース」や公園の整備をするなどの大規模事業です。

 同会議の試算では、事業費は約四千億―五千億円もの巨費となります。

 再開発による不動産資産の上昇などをあてにして、地元企業などに一部負担を求める方針ですが、巨額の税金投入は避けられません。

 構想が動き始めたのは二〇〇一年の扇千景・国土交通相(当時)の「日本橋は首都・東京の顔であり、国として取り組むべき課題」という発言でした。さまざまな案が出される中で、昨年十二月の小泉首相の「日本橋を世界で最も魅力的な場所に」という言葉が一気に流れを加速させます。

 今年二月には、日本橋みち会議が発足。メンバーに日本経団連の奥田碩前会長、武蔵工業大学の中村英夫学長、作家の三浦朱門氏らが就任しました。「魅力ある空間」「歴史的・文化的資源を活用」などを売り込む一方、経済効果の面では「連鎖的に再開発などが進み、大きな直接的建設投資を生む」「経済効果は全国に波及」などの意見が出されました。

 狙いは首都高の移設だけではありません。

交通政策の不在

 ビルなどの容積率を、別の離れた場所に移すことができる「特例容積率適用区域制度」の利用です。日本橋一帯の低層化で生まれる容積率の“浮いた”部分を、東京駅前の八重洲地区に移し、ビル群を超高層化する再開発計画も同時進行しています。

 日本橋上空を覆う首都高は、東京五輪が開催される前年の一九六三年に開通しました。六〇年には中央区議会が、日本共産党を含む全会一致で「(高速道路が)名橋『日本橋』を跨(また)ぐことには絶対反対する」意見書を東龍太郎知事あてに提出するなど反対の声をあげていました。この声を無視して首都高建設を強行した政府・都の責任も問われます。

 首都の交通政策という視点からも、日本橋上空の高速道路「地下化」は合理性がありません。

 いま世界の大都市は、「交通需要管理政策」による自動車交通量の抑制によって、「車社会」からの転換を図ることが流れとなっています。

 東京都では、首都高中央環状新宿線の北側部分が〇七年十二月までに開通するなど今後、新たな自動車道が相次いで完成します。これらの計画は「膨大な建設費がかかり、採算もとれない」と批判されていますが、国交省は「首都高の通過交通が分散される」ことを理由に建設を推進しています。

 都心への車の「流入緩和の実現」が目的ならば、都心を走る日本橋の首都高を撤去した後、新たに「地下化」する必要はありません。(松田大地)


国民的合意ない

 日本共産党の田辺七郎中央区議の話 首都高は東京五輪の負の遺産です。しかし、今回の計画には国民的コンセンサスは得られていません。そもそも、通過交通中心の高速道路を都心に網の目のようにはる道路・交通政策に問題があります。車を減らそうという視点がありません。首都高の撤去を決めて、自動車の全体量を減らす総量規制をし、なおかつ乗り入れ規制をする必要があります。


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