2006年9月14日(木)「しんぶん赤旗」

主張

飲酒運転

根絶へ社会として取り組みを


 毎日のように飲酒運転による事故や違反摘発が報じられます。

 悲惨な大事故があり、「なくそう」という声が高まっているのに、「自分だけは大丈夫」とでも思っているのでしょうか。飲酒運転を繰り返すドライバーに厳罰で臨むのはもちろん、こんどこそ本当に根絶する決意で、社会全体が飲酒運転の問題に立ち向かうことが必要です。

「飲んだら乗らない」

 飲酒運転の車が追突し、三人の幼児の命が奪われた福岡市の事件は大きな衝撃でした。警察庁は各都道府県警への緊急通達で十二日から十八日までを飲酒運転取締強化週間とし、一斉取り締まりを実施しています。事故を起こしたのが公務員だったことから、各自治体などでも職員の処罰規定見直しをすすめています。

 飲酒運転は、運転者の感覚や判断力をにぶくし、車を「走る凶器」にします。酒を飲んで車を走らせることは、無差別殺人にも等しい犯罪です。「飲んだら乗らない、乗るなら飲まない」―それだけのルールが守られれば、飲酒運転の根絶は可能です。運転者の自覚と責任は重大です。

 同時に運転者に自覚を求めるだけでは飲酒運転はなくならないというところに問題の深刻さがあります。

 道路交通法ができた一九六〇年以来、飲酒運転にたいする取締基準や罰則、免許についての行政処分は強化が重ねられてきました。二〇〇一年の刑法改正では、飲酒運転やひき逃げ、速度超過などの無謀運転による事故を「過失」ではなく故意の犯罪として罰する危険運転致死傷罪が設けられ、最高刑は懲役二十年に引き上げられています。

 警察庁の統計では、厳罰化のもとで〇二年以降、飲酒運転による事故は激減し、〇四年には十年前の半数以下になりました。しかし、その後二年連続で再び飲酒運転事故が増加に転じています。厳罰化への「慣れ」や「逃げ得」の横行が原因といわれます。不断の取り締まりとともに、社会的な批判と監視を継続的に強めなければ、飲酒運転はなくせません。

 飲酒運転の多くは常習者によるものです。いっそうの厳罰化や免許の規制の強化で悪質な運転者を排除するとともに、運転する自動車自体への対策も不可欠です。酒気を検知すると車を動かなくする装置も開発され、ヨーロッパなどでは実用化がすすんでおり、この点ではメーカーの責任も免れません。

 飲酒運転の抑止には、運転者の周辺にも責任が求められます。福岡市の事故で県警は、いっしょに酒を飲んでいた会社員を飲酒運転幇助(ほうじょ)で、事故後に水を運んで飲ませた大学生を証拠隠滅で、それぞれ逮捕しました。酒を飲ませる飲食店や同乗者も、罪に問われる可能性があることを自覚すべきです。

 企業や地域で議論を高めることも重要です。国土交通省は運送業界にたいする行政処分を厳格化し、飲酒運転を放置した会社にただちに営業停止を命令できるようにしました。こうした措置も含め、飲酒運転の封じ込めをすすめる必要があります。

許さぬ機運たかめよう

 昨年の交通事故死者数は六千八百七十一人。死亡事故にしめる飲酒事故の割合は13・6%にのぼります。飲酒運転のために、どれだけ多くの被害者の涙が流されたことか。運転者本人、その家族も、悔いても悔いても悔やみきれない一生の苦しみを抱えることになります。

 飲酒運転は、人生の破滅に直結します。絶対に許さぬ社会の機運を高めていきましょう。


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