2006年9月13日(水)「しんぶん赤旗」
いま 地方で
新潟市に国保料引き下げ条例求め直接請求
“2倍の国保料払えぬ”
有権者の15%が署名
来年4月に政令指定都市への移行を予定している新潟市(人口81万人)で、「新潟市の国保をよくする会」が国保料引き下げの条例制定を求める直接請求運動に取り組み、有権者の15%にあたる9万7681人もの署名を市選挙管理委員会に提出しました。住民税の引き上げ、介護保険料、国保料など何重もの負担増で市民の怒りは“沸点”に達し、多くの市民が立ち上がりました。(新潟県・村上雲雄)
「よくする会」働きかけ
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日本共産党の渡辺有子市議が国保の宣伝していると、年配の男性がかけよってきて涙を流し、腕にすがりつき「とってもつらい。なんとかしてほしい」と訴えました。
曽野木団地の「よくする会」が署名に回ると、お年寄りが部屋に招き入れ、「見てください。食べる物も節約し、衣類は何年も買っていない。電話も売り払った。国保料が上がれば生活できません」と訴えました。
署名運動が始まると、会の事務所には「住民税が五倍、国保料も二倍になった」「署名はどうしたらできるのか」「ぜひ運動に参加したい」など、連日電話が寄せられました。
1カ月間で
直接請求は「七月から一世帯平均一万二千円値上げされた国保料を引き下げ、元に戻す」「庶民増税で急激に上がった六十五歳以上の高齢者の負担を軽減する」の二点で、七月十日から八月十日まで署名が取り組まれました。
会には、社会保障推進協議会、医療生協、民医連、民主商工会、新日本婦人の会、生活と健康を守る会、日本共産党など二十三団体と、十七の地域の「よくする会」が加入しました。
署名を集める受任者は六千二百人に。受任者募集の宣伝で登録した人も百五十人にのぼります。
街頭で登録をした女性(69)は初めて署名に取り組み、八十人の署名を集めました。女性は「施設に入所している夫の費用、私の医療費、税金などを合わせると年百万円にもなる。生命保険も解約した。国保料が上がれば生活できない。ムダ遣いを続け、弱い者から搾り取るやり方に怒っている。だから協力した」といいます。
障害者の女性(65)は、車いすで各戸を回り、百人の署名を集めました。「一円をためて卵や野菜を買っているという人も署名した。私自身生活は大変。これまで積み上げてきた制度がなくなるようで弱い者いじめの政治だ」と怒ります。
市民とともに日本共産党も
亀田地区で四百人の署名を集めた男性(69)は「何から何まで上がり、苦しい市民の気持ちがわからないのなら、もう市長や行政にまかせておけない。住民が運動し政治を動かす意思を示さなければならないと思った」と話しました。
初めて人に署名を頼んで四十人も集めた大江山地域の女性(69)はいいます。
「医療費も国保料も上がるようでは安心して医者にかかれない。ここで立ち上がらなければならない。自分のためだと思って一生懸命取り組んだ」
財源はある
新潟市は、総額千四百四十五億円もの新潟駅周辺整備事業に着手し、「お金がない」といって生活保護世帯への見舞金や就学援助の削減をする一方、二年間で百四十八億円も予算を使い残し、一部を基金に積み立ててきました。運動ではこうした事実から財源はあることを指摘。一世帯あたりの平均で他の政令市の半分しかない一般会計からの繰り入れを増やし、他の政令市並みに年二十数億円を繰り入れて国保料の引き下げをはかることを訴えました。
日本共産党は会の一員として力を尽くしました。湊支部は署名期間中、下本町市場で二回のハンドマイク宣伝と署名に取り組みました。春の請願署名の採決で日本共産党以外すべての会派が反対したことを知らせると、「市民の立場でこういうことをしてくれるのはあなたたちだけ」といって署名する人もいました。
29日に採決
選管の審査、縦覧を経て十九日に市長に本請求され、議会での意見陳述(二十五日)、審議・採決(二十九日)されます。
会の野本孝子事務局長は「市民の願いにこたえる運動だったことがはっきりした。十四市町村が合併して初めての運動で困難もあった。わずか四十日の準備期間にもかかわらず、これだけの署名が寄せられた。小泉『構造改革』のもとで削減された社会保障攻撃への反撃になり、新潟市の歴史に刻まれる運動になった。これを結実させるために、市長と議会を動かせるよう最後まで力を尽くしたい」と語ります。
直接請求・受任者 市民が条例制定などを直接請求できる制度。有権者の五十分の一(新潟市では一万三千百十人)以上の署名を添えて提出するもので、市長は自分の意見をつけて議会にはからなければなりません。条例の案と請求代表者を決め、市長に申請を行ってから署名活動に入ります。署名活動は、請求代表者から委任を受け、受任者の登録を行った人しかできません。署名期間は一カ月。