2006年9月9日(土)「しんぶん赤旗」
庶民大増税 なぜなぜ問答
財源論編 6
Q 欧州の高福祉は消費税が高いから?
「ヨーロッパが日本に比べて高福祉なのは、消費税が高いからだ」という人がいます。本当でしょうか。
違う歴史
第一に、ヨーロッパの各国では、たしかに消費税(付加価値税)の税率は20%前後と高いことは事実ですが、この消費税は社会保障財源のためにつくられたわけではありません。
第二次大戦中に戦費調達のためにつくられた間接税が戦後に消費税に移行したことや、EU(欧州連合)統合に向けて消費税の税率が横並びになってきたなど、日本とは異なる歴史的・地理的事情があるのです。
第二に、ヨーロッパの税率は高くても、非課税品目や軽減税率が適用される品目が多数あります。イギリスでは食料品はゼロ税率(完全非課税)です。このため、消費税の税収はそれほど多くありません。
第三に、ヨーロッパには、消費税を「福祉目的税」にしている国はありません。フランスなどでは所得にかかる税(一般社会税)が「福祉目的税」になっていますが、消費税は違います。
以上のように、ヨーロッパの社会保障は、けっして消費税に支えられているわけではありません。
企業負担
では、ヨーロッパの社会保障の財源は、何によって支えられているのでしょうか。
日本とヨーロッパ各国の社会保障財源の内訳を分析すると、図のようになっています。どの国でも、(1)企業など事業主の負担する社会保険料(2)個人が負担する社会保険料(3)税金―の三つが主な財源です。
税金の一部に消費税が含まれてはいますが、財源全体の一割前後にしかすぎず、日本とヨーロッパで大きな差はありません。
むしろ、図からわかるのは、ヨーロッパでは企業などの負担が大きいことです。日本経団連など財界は、「企業の負担を増やすと国際競争力にマイナスだ」といって、消費税の増税と企業負担の軽減を主張していますが、ヨーロッパの企業に比べたら、応分の負担をしているとはいえません。
このことを棚にあげて「ヨーロッパなみの福祉がほしければ消費税増税を」などというのは、国民をあざむく議論です。(つづく)
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