2006年9月9日(土)「しんぶん赤旗」
9・11 ビル崩壊後
作業員7割 呼吸器疾患
【ワシントン=鎌塚由美】ニューヨークにあるマウント・サイナイ医療センターはこのほど、9・11同時テロ事件で崩壊した世界貿易センター(WTC)でがれきの撤去などにあたった作業員の七割が呼吸器疾患に苦しんでいるとの研究結果を明らかにしました。
同医療センターは、二〇〇二年七月から〇四年四月の間にWTCで作業していた一万二千人を対象に健康診断を実施。九千五百人のデータから、高い割合で疾患がみられると指摘しました。
報告では、▽70%近くがWTCで作業中またはその後に、呼吸器疾患を新たに発症するか悪化させた▽9・11前に呼吸器疾患のあった者の61%は症状を悪化させた▽肺炎を含む深刻な呼吸器疾患が9・11前の六カ月よりも顕著に表れた、などの実態を明らかにしています。
同センターのあるマウント・サイナイ医科大学のチャーニー学長は、WTCでの作業と呼吸器疾患の因果関係を「科学的に確認した」と指摘しました。作業員らの健康悪化が、これまでも指摘されてきましたが、市や政府当局者は認めてきませんでした。
崩壊したWTC跡で、がれきの除去作業などにかかわったのは、約四万人と推定されています。刺激性の強いほこりや空中の汚染物質にさらされていた作業員の多くがマスクなどの装備なしで作業していたといいます。
同報告は、悪性腫瘍(しゅよう)など遅発効果を突き止めるためにも、これらの人々への長期的な医療モニタリングが必要だと強調しています。