2006年9月9日(土)「しんぶん赤旗」
自民総裁選 共同会見
格差社会、アジア外交
ゆきづまりの打開 道みえず
自民党総裁選が八日に告示されましたが、同日の候補者三氏の共同記者会見からは、「格差社会」、アジア外交のゆきづまりなど、問われている課題について明確な打開の道筋はまったく見えませんでした。
小泉路線の踏襲
三氏とも、「改革の炎をしっかりと燃やしつづける」(安倍晋三官房長官)、「改革を続けなければならない」(谷垣禎一財務相)など、小泉「改革」の継承を宣言したことでは共通でした。しかし、雇用破壊や社会保障の連続改悪など、「格差」問題そのものを深刻化させた「改革」路線を深く見直す姿勢はみられません。
三氏が強調したのは、「経済成長は大きな視点だ」(麻生太郎外相)、「成長戦略を実行していきたい」(安倍氏)というように“経済成長論”でした。これは、通信技術分野へ投資を誘導するための税財政支援など、財界からの要求でもあります。
一方、社会保障分野での連続負担増や給付減など“激痛”を押し付けられている国民には何をするのかという点ではどうか。「弱い立場の人たちに対し、政治は考えているというメッセージを発信していく」(安倍氏)、「メッセージが出ていない」(谷垣氏)というだけ。財界向けには具体的な施策を示すものの、庶民生活を向上させる具体的な処方せんはありません。
逆に、「給付が増えれば負担も増える」(安倍氏)との発言もありました。給付は物価スライドなどで減らされる一方、負担は増えつづけているのが現実ですが、安倍氏の発言はさらなる給付減に“覚悟”を促すようなものです。谷垣氏は「社会保障目的で消費税を充てる」と消費税大増税論を展開しました。
小泉純一郎首相の靖国神社参拝でゆきづまったアジア外交の立て直しについては、三氏とも、「首脳会談ができる手順をつけていく」(谷垣氏)、「首脳間の外交ができない状態は異常だ」(麻生氏)など、日中間の首脳会談の再開へ向けた“意欲”は強調してみせました。
しかし、肝心の靖国参拝問題に直接言及したのは谷垣氏だけでした。麻生、安倍両氏は「(日本が)孤立しているという話にはくみしない」(麻生氏)、「問題があるから会わないというのは逆だ」(安倍氏)と、中国や韓国に責任をかぶせる発言だけが目立ちました。歴史認識問題での突っ込んだ見解もなく、立て直しの方向は見えません。
安倍氏は、「日米安保で日本の安全、地域の平和は保たれている」と強調。小泉首相から学んだこととして、「イラク戦争で米国を支持した。自衛隊を派遣する決断もあった。やるべき決断をしっかりたじろがずに行った」とのべました。「日米同盟」をふりかざして、いち早く米国支持を表明し、イラクへの派兵に固執した小泉首相の「決断力」を「やるべき決断」と高く評価するところに、アメリカいいなり外交から転換できない姿勢があらわれています。
“違いは年齢”!?
結局、内政、外交とも三氏の主張の違いはなんらありません。最も違いが出たのは、「自分の優れているところ」を問われて、麻生氏が「長く生きていること」を挙げたのに対し、安倍氏が「一番若い点」を挙げたことぐらいです。自民党政治のゆきづまりを前向きに打開する方向性は見えません。(小林俊哉)