2006年9月9日(土)「しんぶん赤旗」
主張
高金利引き下げ
なぜこうもサラ金言いなりか
サラ金の高金利を引き下げる貸金業規制法改正をめぐり、自民党内の調整が難航しています。
異常な高金利引き下げを求める世論の広がりのなかで、昨年三月から議論を重ねてきた金融庁の有識者懇談会では金利引き下げが既定の方針となっていました。ところが金融庁はこの合意に背いて自民党の金融調査会などの合同会議に高金利温存の「特例」を盛り込んだ案を提示、自民党のサラ金派議員がこれに便乗して巻き返しをはかり、結論を先送りせざるをえなくなっています。
「特例」の名で温存
金利引き下げで焦点となったのは、サラ金が利息制限法の上限金利(15―20%)を上回る出資法の上限(29・2%)すれすれで融資する灰色金利の廃止でした。
自民・金融庁の案は、名目上は灰色金利を廃止したといいますが、実は骨抜きです。期間六カ月―一年、三十―五十万円の短期・少額の融資は「特例」として年28%もの高利を認めるからです。サラ金の一件あたりの貸し付け平均は四十万円で、特例が特例でない事態になります。違法とみなされる灰色金利に特例でお墨付きを与えるのだから、サラ金業界にとっては笑いがとまりません。
なぜ高金利特例なのか。サラ金業界と金融庁は、「給料日までのつなぎ資金など短期・少額の融資は、金利を下げると審査が厳しくなり融資が受けられなくなる人が増えるからだ」と、まるでサラ金利用者の利便のためであるかのようにいいます。
この「短期・少額融資」というのが曲者(くせもの)です。
初めてサラ金を使う人は、生活費の不足などを補うために、少額を短期間借りようとします。サラ金側も、「十日以内は無利息」などという条件まで準備して、利用者をつかまえようとしています。
サラ金から四十万円を借りたとしましょう。運がよければ、短い期間で返済し、サラ金との縁を切ることができるかもしれません。しかし、リストラと賃金破壊で収入が減り続けるなか、翌月以降も余裕資金が増えるわけではありません。病気や予定外の出費もあります。借金が生活費のなかに居座り、返済はどうしても滞りがちになります。
サラ金はこれに年三割近い高利を容赦なくかけるのです。返済は高利に追いつかず、返済のために別のサラ金からも融資を受ける多重債務に陥り、破産や自殺にまで至るというのがサラ金禍(か)の構図です。サラ金利用者千六百万人、多重債務者三百五十六万人。これ以上高金利被害を生まないために、実効ある金利引き下げがどうしても必要です。
少額・短期の生活資金を必要とする人たちへの対策も必要です。金融庁有識者懇談会では、低所得世帯へのセーフティーネットとなる緊急小口資金制度や生活福祉資金貸付制度など低利の公的融資制度の拡充などで「関係省庁が連携した取組みを行う」ことを確認しています。
もっとも困っている人たちに手を差し伸べる施策を考えるべきときに、もっとも困っている人たちをサラ金が食い物にするための高利の抜け穴をつくるのでは、政治の役割はどこにあるというのでしょうか。
社会の良識発揮しよう
サラ金業界は、潤沢な資金を使って政界工作を重ねてきました。自民、公明の少なくない議員が業界の利益を代表して運動しています。
こんな邪(よこしま)な動きを許さず、社会の良識に従った例外ない金利引き下げへ世論を高めることが急務です。