2006年9月8日(金)「しんぶん赤旗」
2005年政治資金収支報告
企業献金・政党助成金 どっぷり
総額123億円荒稼ぎ
全収入の1割近くに
パーティー収入
二〇〇五年の政治資金パーティーの収入は、総額で百二十三億八千八百万円で、政治資金収支報告書を提出した政治団体の全収入の9・3%(前年比1ポイント減)でした。「形を変えた政治献金」といわれるパーティー収入は、依然として自民、民主の「二大政党」、政治家の主要な資金源となっています。
パーティーを開催したのは三百六十団体で、うち収入が一千万円以上の「特定パーティー」は二百三十九団体でした。また十九団体が収入で一億円を超えました。
上位二十団体の収入の合計は約三十三億二千三百万円ですが、費用は計約四億四千万円で、一夜にして費用の七・六倍もの収入を得られる“ドル箱”状態です。
〇五年の特徴は、〇四年に最も収入を得た自民党の平成研究会(旧橋本派・現津島派)が百六十三位まで順位を落とす一方、最大派閥となった清和政策研究会(森派)と、安倍晋三官房長官や中川秀直政調会長など同派所属議員が大きく収入を増やしていることです。
中川氏の「秀政会」は、前年比八千二百二十万円増の二億九千四百二十三万円、森派は六千三百万円増の二億七千五百五十四万円、安倍氏の「晋和会」は千七百万円増の一億三千百三十六万円となっています。
注目されるのは一枚二万円が相場のパーティー券の購入先。森派の場合、旧橋本派への一億円ヤミ献金が問題となった日本歯科医師連盟が百三十万円分を購入したほか、民間企業では昨年、耐震偽造問題で社長が起訴されたヒューザーが五十万円分を購入しています。
民主党は昨年五月に開いた「大躍進パーティー」で前年比二千二百三十万円増の二億八千万円を売り上げました。小沢一郎政経研究会も一億一千三百四十二万円の収入です。同党パーティー券の主な購入先は、連合(百五十万円)、全日本自動車産業労働組合総連合会(百五十万円)など労組や部落解放同盟中央本部(百十八万円)ですが、住友信託銀行(二十六万円)をはじめ民間企業も含まれています。
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上位15社から2億円
軍事機密情報保護を要求
軍需企業献金
自衛隊の戦車、艦船、航空機といった装備品などを受注している軍需企業が、二〇〇五年に自民党におこなった献金は、防衛庁との契約額上位十五社(〇五年度)の合計で、一億九千六百八十九万円に及びます(別表)。この上位十五社の契約額の合計は、約九千三百億円。防衛庁の総契約額の約68%にあたります。
軍需企業側は、米軍と自衛隊の一体化が進む中、兵器の日米共同開発・生産の拡大と、その“障害”になっている武器禁輸原則の緩和要求を強めてきました。
政府は、こうした要求にも応え、次期「ミサイル防衛」システムの日米共同開発・生産について、同原則の緩和に踏み込みました(〇四年)。その後、昨年十二月に共同開発を正式決定し、日米両政府は、米国に武器や武器技術を提供するための枠組みにも合意しました(今年六月)。
これに飽き足らない軍需企業側は「新戦闘機や無人機、テロ生物化学兵器対処等についても…積極的に米国との共同開発・共同生産を進める提案を今後行っていく」(日本経団連の西岡喬副会長、昨年十一月)とし、「ミサイル防衛」以外にも共同開発・生産を広げたい考えを示しています。
共同開発・生産を拡大していく上で日米が要求を強めているのが、軍事機密情報の管理体制強化です。
日米の軍需企業が後援する第八回日米安保戦略会議(八月)で西岡氏は「軍事機密情報の保護のための一般的協定が必要となっている」と述べ、軍事秘密一般保全協定(GSOMIA)の締結を求めました。自民党の久間章生総務会長も同協定の締結を提言しました。
同協定は、米国が締約国に軍事情報の保護を義務付けるもの。義務付けられる保護の範囲は、米軍と契約する企業にも及びます。
今でも軍事情報の多くが隠されている中、国民の知る権利をいっそう奪うものです。
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総裁候補
安倍氏2億円を集金
収入の67%がパーティー
自民党総裁選に出馬する三候補の二〇〇五年の資金管理団体の収入を比べると、安倍晋三官房長官が二億四百二十六万円(前年比28・6%増)とトップで、麻生太郎外相の一億三千五百五十四万円(同9・4%増)、谷垣禎一財務相の四千二百六十五万円(同12・7%増)と続きます。
安倍氏の収入の67%は政治資金パーティーによるものです。〇四年より一回多い四回開催し、二割増やしました。
団体献金は、日本医師連盟の九百五十万円をはじめ、日本薬業政治連盟三百五十万円、製薬産業政治連盟四百万円、日本精神科病院政治連盟二百万円など、医療・薬業関係から二千百万円の献金を集め、総額で四千四百三十四万円。
また自ら代表を務める自民党山口県第四選挙区支部から千六百九万円の“寄付”を受けるなど、政党支部を献金のトンネルにしています。関連政治団体の東京政経研究会(同氏の資金管理団体と同じ住所)からも五百万円の献金となっています。
麻生氏もパーティーの比重が高く、都内で一回開き八千五百九十四万円の収入をあげています。団体献金は三千九百万円で、うち三千五十万円は中国素淮会(広島県呉市)、東海素淮会(名古屋市)、麻生太郎先生を囲む会(大阪府岸和田市)など麻生氏の政治団体からの献金。地方に組織した政治団体を“財布”に資金管理団体に流し込む構図です。旧河野グループからは三百万円を受けています。
谷垣氏は、団体献金は百六十万円集めました。前年の六百三十万円から大きく減らしていますが、パーティー収入は三千百十四万円(同9・1%増)です。
全体像見えにくい政治資金収支報告
政治資金収支報告書とは、政党や政治団体が一年間の収入と支出を届け出たもの。政治献金を受けることができるのは政党(支部含む)とその政治資金団体、政治家個人の資金管理団体(一団体)と政治団体です。
報告書の提出先は総務相(二つ以上の都道府県にわたって活動する政党や政治団体など)と、都道府県選挙管理委員会(主に都道府県内で活動する政党支部や政治団体)の二つです。総務相届け分の公表は毎年九月ですが、都道府県分はそれぞれの選管ごとに順次公表され、政治とカネの全体像が見えにくくなっています。
献金には個人献金と企業・団体献金があり、政治家個人の資金管理団体への企業・団体献金は二〇〇〇年から禁止されました。しかし、政党本部や政治家が代表を務める政党支部、政治資金団体で受け取る抜け道が残されています。
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トップの森派 5割増
旧橋本派は4割減
自民派閥収入
自民党各派の二○○五年の収入総額は、前年比10・3%増の二十七億円で三年連続増加しました。
森派が前年比約五割増の五億七千四百万円で、三位からトップに浮上。前年一位の津島派(旧橋本派)は約四割減の四億三千万円で二位になりました。
一億円ヤミ献金事件を受け○四年七月から一年四カ月にわたって会長不在の混乱が続いた津島派は、二億―四億円の収入が見込める春の資金集めパーティーを「開く状況ではなかった」(会計担当者)として見送った上、所属議員からの寄付が大幅に減少。九月の衆院選前には各支部に選挙対策資金を投入するため、みずほ銀行から二億円を借り入れました。
一方、小泉純一郎首相、安倍晋三官房長官の出身派閥である森派は、中川秀直政調会長や安倍氏らによる大口の資金拠出で寄付総額が前年比84・4%増の二億九千八百万円となり、パーティー収入も二億七千六百万円と30・1%増加。支出面では、○四年にはなかった「氷代」「モチ代」とみられる夏冬の所属議員への寄付が計上されたため、六億一千二百万円と約二・一倍になりました。
全国不動産連盟など業界団体からの献金が増えた丹羽・古賀派(旧堀内派)、パーティー収入が増加した二階派は、それぞれ四割を超える増収。
伊吹派(旧亀井派)は、前年一億三千百万円を拠出した亀井静香国民新党代表代行の自民党離党により寄付収入が減少しましたが、パーティー収入の増加で全体としては増収となりました。
各党の特徴
◆自民党
収入は前年比一億八千五百四十万円減って二百六十二億二千九百三十万円。企業・団体献金は政治資金団体の国民政治協会からの交付が三千八百九十万円増の二十八億六千万円で、収入の10・9%を占めます。
総選挙の議席増を受け、政党助成金は二億四千五百七十万円増の百五十七億七千九百五十万円で、収入比は60・2%と前年(58・8%)を上回りました。収入の七割を企業・団体献金と政党助成金に依存しています。
国民政治協会への献金額を最も増やしたのは石油連盟の八千万円(二千万円増)。二千五百万円を献金したJFEスチール(五百万円増)、住友商事(三百万円増)、三井物産(同)、三菱商事(同)など日本経団連会員企業の金額アップが見られます。経団連会長企業のキヤノンは外資保有比率が50%を超えていたため政治資金規正法上献金ができませんが、キヤノン販売六百万円など関連会社四社が計一千万円を献金しました。
支出は十億四千九百六十万円減って二百七十億三千三百九十万円。選挙関係費は半減し五億四千百十万円ですが、これは国政選挙で候補者に交付する公認料を選挙関係費として計上せず、地方組織への交付金(百二十三億七千二百五十万円)を七億八千六百万円増やして対応したためです。
◆民主党
収入は六千二百五十万円減の百四十億七千四百六十万円。個人献金は前年の三十六万八千円からさらに減って二万七千円でした。企業・団体献金は政治資金団体の国民改革協議会からの交付が四千二百万円増えて一億二百万円となりました。新たに献金した企業にはキッコーマン(百五十万円)、丸紅(百万円)、王子製紙(同)、伊藤忠商事(同)など経団連会員企業が目立ちます。
政治団体ではこれまで党主催のパーティー券購入だけだった日本医師連盟(五百万円)と道路運送経営研究会(十万円)が新たに献金しました。
総選挙の敗北を受け政党助成金は五千四百五十万円減り、百十七億六千五百三十万円。収入に占める比率は前年と同じ83・6%と、依然として八割以上を政党助成金に頼っています。
毎年五月に東京都内のホテルで開く党躍進パーティーでは前年より二千二百三十万円増の二億八千十万円集めました。
支出は五十二億七千三百五十万円増の百六十七億二千九百五十万円。政党助成金から100%充てている選挙関係費を前年の九億三千四百七十万円から二十一億八千三百六十万円増やし、三十一億一千八百三十万円としました。
◆公明党
収入は六千八百万円減の百六十一億三千三百八十万円。機関紙誌発行などの事業収入は九億二百八十万円減の九十五億八千五百四十万円。政治資金団体の公明文化協会からの交付は前年と同じ二億円ですが、同協会には自民党の政治資金団体・国民政治協会にも献金した全国不動産政治連盟が三百万円献金しました。
政党助成金は四千三百五十万円減の二十九億四千三百七十万円で収入に占める比率は18・2%。
支出は十億四千三百五十万円減の百四十六億七千三百二十万円。選挙関係費は一億一千八十万円増え十億一千八百三十万円でした。
◆社民党
収入は八千九百万円減の二十億四千八百十万円。減収は事業収入五億八千二百五十万円(六千三百二十万円減)、政党助成金十億二千二百四十万円(八千九百二十万円減、収入比49・9%)などですが、個人献金四千五百十万円(二千三百十万円増)と、りそな銀行と個人からの借入金五千八百万円(三千八百万円増)が増えました。企業・団体献金は二社など百三十二万円でした。
支出は一億三千九百六十万円減の二十億二千二百三十万円でした。
◆国民新党・新党日本
郵政民営化法に反対して自民党を離党した議員らがつくった両党には、総選挙の結果、国民新党に六千九十万円、新党日本に四千万円の政党助成金が交付されました。
しかし、両党には郵政民営化に反対する特定郵便局長会の政治団体、大樹全国会議が国民新党に一億九千万円、新党日本に四千三百万円を献金。所属議員の資金管理団体からの借入金や献金も収入に充てています。
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