2006年9月7日(木)「しんぶん赤旗」
安倍「政権公約」をみる(3)
教 育
「愛国心」「統制」を政策化
安倍晋三官房長官は政権公約・政権の基本的方向性の第二の柱「自由と規律の国」のトップに「教育の抜本的改革」を掲げました。安倍氏がめざす「保守復権」の国づくりの柱に改憲と「教育改革」を位置付けたのです。
最重要法案
その「教育改革」でまず狙うのが教育基本法の抜本改悪です。一日の自民党中国ブロック大会でも、安倍氏は「国会で審議している教育基本法の改正はもちろんのこと、教育制度全般を見直していく」と強調。三日の同東北ブロック大会では「臨時国会は日数が限られているので集中して課題に取り組まなければならない。その中でも大切なのは教育基本法の改正だ」とのべ、教育基本法改悪法案を最重要法案としました。
同改悪法案の第一の問題点は、「国を愛する態度」など二十におよぶ「徳目」を並べ、「目標の達成」を国民全体に義務付けていることです。
安倍氏は、この内心の自由を侵す問題を逆に「教育再生」の柱にしています。最近の親殺し、子殺しを例にあげ、「子どもたちが親を敬愛し、おじいさん、おばあさんを大切にし、地域をよくしたい、そう願っていく当たり前の教育を取り戻そう」とのべました。一見して、当たり前のようにみえる安倍氏の主張も、国が法律に「目標」として書き込み、「達成」が義務付けられれば、時の政府が特定の価値観を子どもたちに強制することになります。
しかも、安倍氏は、靖国神社崇敬奉賛会主催の公開シンポジウム(二〇〇四年十一月二十七日)で「(教基法改定案に)国を愛する気持ち、涵養(かんよう)する心を育てるということをしっかり入れるべきではないかと思います」「国が危機に瀕(ひん)したときに命を捧(ささ)げるという人がいなければ、この国は成り立っていかない」とのべました。
「自由と規律」の先に「愛国心」があり、「国に命を捧げる」ことの強制があるとすれば重大です。
評価制度で
教基法改悪法案の第二の問題点は、教育への国の無制限の介入を可能にしていることです。この点でも、安倍氏は政権公約のなかに、「学校、教師の評価制度の導入」を盛りこみました。
安倍氏は著書『美しい国へ』で、この評価制度について「学力ばかりでなく、学校の管理運営、生徒指導の状況などを国の監査官が評価する仕組み」であり、国が問題校とみなした学校には「文科相が教職員の入れ替えや、民営化への移管を命じることができるようにする」としています。文字通りの国家による教育統制です。安倍氏は全国いっせいの学力テストも推進する立場です。
このモデルとして、安倍氏は国家統制と競争を徹底したイギリスのサッチャー元首相の教育改革をあげています。これについて、『週刊ダイヤモンド』九月二日号は次のように書いています。
「愛国教育に加え、中央集権と競争原理の改革を志向する安倍氏らしい。だが、間違っている。サッチャー改革では基礎学力は向上せず、教育機会格差は拡大し、放校、退学処分者が続出、彼らによる犯罪も増加した…これらの事実を安倍氏は書かない。不勉強か曲解か。その底の浅さが悲しい」(つづく)