2006年9月6日(水)「しんぶん赤旗」
米の雇用「改善せず」
政府の失業者統計に疑問
民間シンクタンクが報告書
【ワシントン=山崎伸治】四日のレーバーデー(労働祭)にあたって、米労働省は恒例の「米国の労働力」報告を公表しました。そのなかで「わが国の経済は力強く、成長を続けている。失業率は低く、雇用の機会は拡大し、報酬は伸びている」とその特徴を強調しました。しかし、民間の調査機関がこの評価に疑問を呈しています。
労働省の報告は、(1)二〇〇六年上半期の全米の失業率が平均4・7%で、一九九〇年代の平均5・7%よりも低い(2)〇三年八月以来、〇六年六月までに五百四十万の新たな雇用が創出された(3)〇五年に時間給は1・9%上昇し、九〇年代前半の1・1%を上回った―ことなどを指摘しました。クリントン民主党政権時の九〇年代と対比することで、ブッシュ政権の経済運営の「好調」ぶりをことさら強調するものとなっています。
これに対し、民間のシンクタンク「経済政策研究所」がこのほど公表した報告書「働く米国民の状況」(〇六―〇七年度版)は、生産性が向上しながら雇用状況は改善していないと分析しています。
そのなかで、失業率が比較的低いといっても、長期失業者の増大が問題だと批判しています。昨年一年間の失業率は4・6%から5・0%で推移しましたが、歴史的にはこの水準で二十七週以上の長期失業者が全失業者に占める割合は10・8%程度でした。ところが現在はそれが18・4%にもなっています。
長期失業者のうち、ブルーカラーが占める割合は一九八九年の43・4%から、〇五年は29・9%に減少、一方でホワイトカラーは同時期に31%から42%に増えています。米国では一般に、製造業で失われた雇用をサービス業が吸収したと言われることがありますが、サービス業でも長期失業が拡大していることがうかがえます。
雇用創出について、二〇〇一年後半から〇三年にかけての景気回復は、実質国内総生産(GDP)が拡大しながら、創出された以上の雇用が失われた「雇用のない回復」だったと指摘。従来は二十一カ月といわれた「雇用の波」のサイクルが、現在は四十六カ月と長くなっていると指摘しています。
さらに報告書は、生産性が向上し、低失業率が続いても賃金の上昇につながっていないと分析。とくに女性やアフリカ系、ヒスパニック系の人たちの賃金が低く抑えられたままだと指摘しています。
報告書は、生産性の拡大が労働者の繁栄に結びつくには、強力な団体交渉といった労働市場での慣行や十分な最低賃金、労働力の需要が供給を上回る労働市場が合わせて必要だと指摘しています。