2006年9月5日(火)「しんぶん赤旗」

アフガンで偵察機墜落

英国に衝撃

保守層も駐留疑問視


 【ロンドン=岡崎衆史】二日にアフガニスタンに駐留する国際治安支援部隊(ISAF)に参加する英軍機が墜落し、十四人が死亡した事件が英国内に衝撃を与えています。英軍のアフガン駐留や任務を疑問視する声はこれまで支持してきた保守層にも拡大。駐留する約四千人の軍撤退を求める声も強まっています。


 墜落したのはアフガニスタン南部で旧アフガン支配勢力のタリバン掃討作戦に参加中の英軍偵察機です。原因について英国防省は事故とみています。しかし、地上から攻撃を受けた可能性を指摘する専門家もいます。

 十四人の死亡で、二〇〇一年十一月以降アフガニスタンで死亡した英兵は三十六人となりました。今年二月以降英軍が南部のヘルマンド州に展開を開始して以降、犠牲者は急増し、過去一カ月間は最も多い二十三人となりました。

 事件を受け、三日付英各紙は、「対テロ戦争で最悪の軍事的惨状」(オブザーバー)、「フォークランド紛争以降の軍事作戦中一度に起きた最大の人命の損失」(サンデー・テレグラフ)と伝えました。

 ブレア首相は二日、声明を出し、「悲劇によって国家全体が悲しむ」「事件は、彼ら(英兵)が日々直面する危険を私たちに思い起こさせた」と述べ、事件の影響の大きさを隠せませんでした。

 BBC(電子版)は二日、「事件はアフガニスタンの(英軍)任務に多くの疑問を投げかけることになる」と指摘。ポール・ウッド軍事専門記者は、保守党の幹部はアフガンとイラクへの英軍駐留を支持してきたが、幹部以外は「アフガンでの任務は何か、という基本的疑問に立ち戻っている」と述べ、保守層や右派にもアフガニスタン駐留への疑問が広がっていることを明らかにしました。

 イラクで息子を亡くした「反戦兵士家族会」のローズ・ジェントルさんとポーリン・ヒッキーさんは共同声明を出し、「もしもブレア首相がブッシュ米大統領と彼の進める戦争の忠実な同盟者でなければ、死亡した人々は今も生きているだろう。私たちの軍隊を今こそアフガニスタンとイラクから撤退させるべきだ」と訴えました。

 対テロ戦争反対の論陣を張ってきたインディペンデント紙(日曜版)は三日、「私たちはこれまでも疑問を呈してきたが今もう一度いいたい。英軍の作戦は不可能なのではないのか」と述べ、英軍のアフガニスタン駐留に改めて疑問を投げかけました。

 一方、サンデー・テレグラフ紙三日付によると、アフガン駐留英軍は、現地司令官に先制攻撃も含めた作戦実施権限を与え、公式に戦争態勢に入りました。これまでアフガン駐留英軍に認められたのは敵からの攻撃を受けた場合の自衛反撃のみだったといいます。

 アフガニスタンでの作戦について、今年一月、リード国防相(当時)は国会で、タリバンとの戦争やテロリストの掃討作戦実施を否定。復興のための治安維持の任務を強調していました。

 英兵の犠牲が増える中、英軍は国民の不安を和らげるために強調してきた治安維持任務の建前を捨てて、完全な臨戦態勢に入らざるを得ないほど追い詰められたことを示しています。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp