2006年9月5日(火)「しんぶん赤旗」

安倍「政権公約」をみる(2)

安保・靖国

「主張する外交」の危険


 日本の保守政治家の対外政策は、米国向けの演説で、もっとも率直に語られるといわれます。

 安倍晋三官房長官も、昨年五月に米国の保守系シンクタンク・ブルッキングズ研究所で行った講演で、「われわれの世代の責務の一つは、今までの政府解釈を変更して(集団的自衛権の)行使を可能にすることだ」「次の首相も私は靖国神社に参拝すべきだと考えている」と明言しました。

強まる圧力

 この主張が、政権公約ではどうなったか。

 安倍氏の外交・安全保障分野でのキャッチフレーズは「主張する外交で『強い日本、頼れる日本』」です。安倍氏は「日米同盟関係が外交・安全保障の基盤」(一日、自民党中四国ブロック大会)であるとし、その限りでは従来の自民党外交と変わりません。

 一方、具体的な内容として「『世界とアジアのための日米同盟』を強化させ、日米双方が『ともに汗をかく』体制」を掲げ、海外での武力行使を可能にする集団的自衛権の行使に向け、検討を進める考えを示しました。

 イラク派兵で戦後初めて戦地への自衛隊派兵に踏み切った小泉内閣以上に「双務性」を高めるならば、憲法が禁じる海外での武力行使をはじめ「ミサイル防衛」の推進など、いっそうの日米軍事一体化につながります。

 米側からは、「在日米軍再編で合意したことで、日本政府は集団的自衛権の政策を変えざるをえない」(アワー元米国防総省日本部長)という声も上がるなど、集団的自衛権の行使に向けて圧力が強まっています。安倍氏の政策は、こうした米側の「主張」に応えようというものです。

 その先にあるのは、安倍氏の持論である、米国の先制攻撃戦争に公然と参加する英国のような「血の同盟」です。

 一方、「靖国参拝」については政権公約に明記せずに、「中国、韓国等近隣諸国との信頼関係の強化」と述べるにとどまっています。

 自民党総裁選への出馬会見(一日)でも、「行くか、行かないか」を明言しませんでした。

 あいまいな姿勢の背景には、中国・韓国の姿勢や国民世論、さらに「(日本の首相の靖国参拝は)日本とは価値観と利害を共有する米国にもマイナスに働く」(ジアラ元米国防総省日本部長、「朝日」六月二十四日付)という米国の立場があります。昨年十一月、今年六月の日米首脳会談でも靖国問題が議題となりました。

侵略認めず

 ただ、一日の会見でも靖国参拝への態度を聞かれ、「尊敬の念を持ちつづけたい」と語りました。日本の戦争が侵略戦争だったかについても「歴史家が判断すべきこと」として、侵略を認めようとしていません。

 米国の国益に沿う方向で中韓両国との関係を「修復」し、戦前の歴史を美化する立場は変えない―。政権公約で「主張する外交」をいうものの、米国が認める範囲内でしか「主張」できない、従来の自民党政治の域を出ていません。(つづく)


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