2006年9月4日(月)「しんぶん赤旗」
住民・テント吹き飛ぶ
海自ヘリ・上陸艇の風圧
事前規制なし「おかしい」
千葉・防災訓練
千葉県いすみ市の大原海水浴場で三日、同市と千葉県主催の防災訓練が行われました。八都県市合同防災訓練の一環。海上自衛隊の上陸、水難救助の両訓練では、上陸艇と救難ヘリの強風で訓練本部の大型テントをなぎ倒し、住民も転倒、サーフボードなどが舞いあがるなど危険な場面が続出しました。(山本眞直、撮影・山形将史)
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防災訓練は太平洋の遠地地震で津波が発生したとの想定で、住民の避難、水難救助など。地元の消防団や海上保安庁のほか海上自衛隊、陸上自衛隊が参加しました。
事故が起きたのは、沖合に停泊した海自輸送艦「くにさき」から陸自第一空挺(くうてい)団を乗せて会場の海水浴場に上陸していた上陸用エアクッション艇「LCAC」が、海に戻るときでした。
上陸艇は空気圧で浮上し、前進するために大型ファンを回転させます。上陸艇周辺では自衛隊員が警戒にあたりましたが、数十メートル離れた地点で見物していた中年女性が風圧で転倒。ほぼ同位置に設営されていた訓練本部の大型テントの一部がつぶされ、数十席のパイプいすもなぎ倒されました。
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午後二時前後には水難救助訓練で、被害者を空輸する海上自衛隊の救難ヘリが海水浴場の上空を低空で旋回した際、風圧でサーフボードとファミリーテントが舞いあがりました。
会場の海水浴場には多数のサーファーや家族連れなどが楽しんでいましたが、突然の上陸艇や救難ヘリにビックリ。
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いすみ市の男性(32)はぶぜんとした表情で「家族と友人で海水浴をしにきたら、突然、訓練をやるから移動しろと言われた。事前の規制もなく、こんなやり方はおかしい」と怒りをぶちまけていました。
一歩間違えば大きな事故に
日本共産党の鵜沢喜久雄市議は「今回の合同訓練は、十分な事前調整もなく、八都県市の計画を地元が受け入れるというものでした。風圧で住民が倒れ、テントの支柱がまがりつぶれるなど一歩間違えば大きな事故につながるもので安全確保など主催者の責任は大きい。もっと地元が主役の訓練にすべきだ」と語りました。
解説
住民の安全ないがしろ
海水浴場を会場にした八都県市合同防災訓練で起こった事故は、防災訓練のあり方を根本から問うものです。
強力な風圧で移動する上陸用エアクッション艇「LCAC」を海水浴場に上陸させるというのに、会場付近の浜には、注意や移動を求める掲示板もありませんでした。訓練本部関係者が海水浴客らに移動を呼びかけたのは、海自輸送艦「くにさき」が海水浴場にちかづき、LCACが浜に接近を始めたときです。
海水浴客はよびかけに応じて移動しましたが、上空を低空で旋回する海自救難ヘリの風圧でサーフボード、ファミリーテントが飛ばされました。とりわけ訓練本部テントが風圧でつぶれ、住民が転倒したケースでは、上陸艇の風圧の強さを熟知している海自の責任が問われます。海自側が事前に上陸場所周辺の立ち入り規制区域を自治体側に通知すれば、市民の安全が確保できたはずです。
そもそも「津波対応訓練」でなぜ上陸訓練なのか疑問です。市幹部によれば、「自衛隊からぜひやりたい」と持ちこまれたと言います。防災訓練を憲法違反の自衛隊の訓練優先、実績づくりの場にせず、あくまで住民の安全優先、地元自治体が主人公とすることが改めて強く求められています。