2006年9月3日(日)「しんぶん赤旗」

安倍氏の政権構想

自民総裁選

だれにとって「美しい国」


 安倍晋三官房長官の政権構想は「美しい国、日本」との打ち出しです。問題は、だれにとって「美しい国」なのか、です。

大企業が中心

 国民が聞きたかったのは、庶民に激痛をもたらしている小泉「改革」をどうするのか、です。安倍氏が示したのは「イノベーションによる経済成長」「良いヒト・モノ・カネを世界から集積」など、財界がかねてから要求してきた大企業中心の経済成長論です。

 ここには、市場原理や規制緩和を万能薬のように見たて、格差や貧困を社会問題にまでした小泉「改革」への反省はありません。むしろ、「五年間つづけてきた改革の炎を燃やしつづける」(一日の記者会見)として、小泉路線の継承を宣言しています。

 「勝ち組、負け組が固定しない社会」をめざすとも掲げましたが、処方せんは示しませんでした。連続改悪にさらされてきた社会保障分野では「考え方として、社会保障制度に頼るのではなく、自立の精神でなくてはならない」(一日の記者会見)と、いっそうの負担増を国民に説く冷たさです。

米要求に応え

 安倍氏は、改憲を政権の課題とし、政治日程にのせると宣言しました。自民党総裁選で改憲を公約に掲げるのは五十年ぶりです。海外での武力行使を可能にするため改憲を強く求めている米国の要求にこたえるものです。

 集団的自衛権についての検討も、「日米同盟をより効果的に機能向上させるため」と断言。一日の記者会見では、改憲への道筋を「任期中に少しでもすすめていく」とのべ、改憲手続き法案の成立を強調しました。

 一方、広範な自治体や住民から反対の声があがっている米軍基地再編問題については、何ら言及はありませんでした。

戦後体制脱却

 安倍氏は「『戦後レジーム』から、新たな船出を」と強調しました。脱却すべき「戦後体制」の最たるものとして掲げたのが現行憲法です。同時に、一日の自民党の集会では、「教育基本法の改正はもちろん、教育制度全般について見直す」とのべています。憲法や教育基本法を「占領時代の残滓(ざんし)」として、そこからの「脱却」をはかることは、戦後民主主義の総否定にもつながりかねません。

 小泉首相の靖国神社参拝でゆきづまりに拍車をかけたアジア外交の改善も、具体的な方策は示しませんでした。自身の首相としての靖国参拝については言及を避け、「(靖国神社に)行く、行かないで首脳会談ができる、できないというのは間違っている」とのべました。

 こうしてみると、安倍氏のいう「美しい国」とは、大企業やアメリカにとっては「美しい国」であっても、庶民にとって「美しい」とは見えません。これまでの自民党政治の異常ぶりに、さらに拍車をかける危険性が目につきます。(小林俊哉)


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