2006年9月3日(日)「しんぶん赤旗」

主張

自民総裁選

改憲候補に、なだれ打つ異常


 安倍晋三官房長官が、谷垣禎一財務相、麻生太郎外相につづいて、自民党総裁選への立候補を正式に表明しました。

 総裁選は事実上、小泉内閣の有力閣僚三氏の争いです。にもかかわらず、財務相の谷垣氏が「財政の立て直し」を掲げ、外相の麻生氏が「外交の転換」を口にするところに、小泉政治の行き詰まりの深刻さが表れています。しかも問題なのは、最有力視される安倍氏が公然と改憲を掲げ国家主義的な立場をむき出しにしているのに、それを問題にするどころか、安倍氏支持が雪崩(なだれ)を打っていることです。

小泉政治の枠のなかで

 自民党の総裁選は、かつては“振り子の論理”という言葉もあったように、自民党内の争いではあっても、国民の意思を多少なりとも反映する役割を持った時期もありました。しかし今回はまったく違います。最初から小泉内閣の有力閣僚同士の争いで、外交や内政で小泉政治の行き詰まりがどんなに深刻でも、それに代わる処方箋(せん)が示されているわけではありません。

 「財政の立直しに逃げずにぶつかる」という谷垣財務相にしても、政権構想(公約)で主張するのは、消費税を中心にした増税です。「外交の転換」をいう麻生外相が掲げるのも外交を「パワーアップ」するぐらいで、「日米同盟を基軸」にするなどといった路線に変わりありません。

 最有力視される安倍氏にも、小泉政治の行き詰まりを打開する処方箋はありません。立候補表明と同時に発表した政権構想では、「誰もがチャレンジ、再チャレンジできる社会の実現」だの、「『世界とアジアのための日米同盟の強化』」などの言葉が並びます。しかし、小泉政治がもたらした深刻な格差と貧困の拡大や、アメリカ一辺倒の外交などを打開する展望は示せていません。

 なにより小泉首相が繰り返した靖国神社への参拝を、侵略戦争と植民地支配への反省を明確にして、やめると主張する候補は一人もいません。これではアジアはもとより世界での日本の孤立は解決できません。

 しかも、その安倍氏が政権構想で第一に持ち出したのは、「新しい時代を切り開く日本に相応(ふさわ)しい憲法の制定」です。自民党としての改憲案づくりを推進した小泉政治をうけ、小泉首相でさえ首相在任中には持ち出さなかった改憲を公然と掲げて、安倍政権が文字通り「改憲内閣」になることを示すものです。

 安倍氏は、なぜ改憲かについて、「戦後レジーム」からの船出などといった独特の歴史認識を繰り返しています。実際には「日米双方が『ともに汗をかく』体制を確立」(政権構想)するという言葉が示すように、めざすのは自主的な「国づくり」どころか、アメリカとともに、「海外で戦争をする国」づくりです。それは小泉内閣以上に、日本を危険な方向へ導くものです。

自民党政治の転換こそ

 こんな安倍氏を自民党内の大勢が雪崩を打って支持するのは、自民党そのものが小泉政治のもたらした政治の行き詰まりを打開する力を失い、改憲「タカ派」路線に引きずられていることを示すものです。実際、改憲では、谷垣氏も集団的自衛権の行使は「憲法改正」でと主張し、麻生氏も「結党以来の党是」と実現を目指すことを隠していません。

 こんな安倍氏を与党が数の力で首相に担ぎ上げても、日本国民や世界との矛盾を深めるだけです。自民党政治そのものの転換が必要です。


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