2006年8月31日(木)「しんぶん赤旗」
16年五輪候補に東京決定
大規模開発を加速 都民施策なおざり
二〇一六年の五輪の国内立候補都市に東京都が選ばれました。
石原慎太郎知事は「世界一コンパクトな大会をめざす」と胸を張っています。しかし、都の「五輪招致」は、都民が願うスポーツの振興を後回しにする一方、浪費型開発を一気に加速しようとするものです。
道路に投資
都が五月に公表した「東京五輪基本方針」では、「五輪を梃子(てこ)に都市と社会を変革する」「(五輪までの十年間で)三環状等の道路整備を加速させ、稠密(ちょうみつ)な公共交通網との融合により、高効率な都市を実現」と掲げました。
この方針に呼応し、六月には、沿線住民の反対で三十年以上も凍結していた東京外郭環状道路(外環道)を、住民との協議の頭越しに、建設へ向けて踏み出しました。
外環道などの三環状道路をはじめとする幹線道路や、中央区晴海に建設予定のメーンスタジアムなどの会場施設、東京駅などのターミナルからメーンスタジアムに十万人もの観客を輸送する公共交通を整備すれば、投資総額は七兆円を大きく超えることになります。
しかも、都は今年度予算で「五輪開催準備基金」として一千億円を積み立て、五輪に向けて毎年一千億円ずつ積み増す方針を示しています。石原知事は五輪開催概要計画書をJOCに提出した六月三十日の記者会見で、この基金について「使い道は交通インフラ(社会基盤)の前倒し整備にあてるのか」と問われると、「それもあるでしょう」と認めました。
五輪招致を“錦の御旗”に、懸案の大規模開発を加速しようという狙いは明らかです。
体育館は減
石原都政は大型開発のために巨額の積み立てを行う一方で、福祉や教育、スポーツ振興など都民の暮らしを支える施策を削っています。スポーツ関係予算についていえば、石原都政は二〇〇一―〇五年度で四割以上も削りました。都立体育館も六館から四館に減らし、都民が安心してスポーツする環境を後退させています。都のスポーツ振興審議会委員からも予算説明の過程で、「いつまで都のスポーツ振興予算は減り続けるのでしょうか」との疑問の声が出されるほどです。
都の計画は、都民のための施策をなおざりにした「浪費型五輪」の典型です。五輪招致をテコとした大型開発と浪費を中止し、福祉やくらし、身近なスポーツなどの都民施策にまわすべきです。(川井亮)
五輪テコの浪費は中止を
共産党都議団が談話
日本共産党都議団の吉田信夫幹事長は三十日、東京が二〇一六年オリンピックの国内立候補都市に選ばれたことについて談話を発表しました。
談話は、日本共産党は、オリンピックそのものに反対するものではないが、「オリンピック招致が大型開発のテコとされ、都民生活と都財政に深刻な影響を及ぼす危険が明白であることから、招致に反対してきた」とし、立候補都市の選定をもって「大型開発を加速することは許されない」と述べています。
その上で、都の計画が「世界一コンパクト」どころか「浪費型オリンピック」の典型であるとし、用地確保や公共交通整備に一兆円、外郭環状道路など大型幹線道路整備の事業費は六兆円と推定されることを都は隠していると批判。福祉やくらしを支えるための予算こそ最優先すべきで、毎年一千億円もの積み立てや浪費的投資の拡大はすべきでないとしています。
最後に、「わが党はこれからも、オリンピック招致をテコとした大型開発とそのための莫大(ばくだい)な浪費を中止させ、都の財政を都民の福祉やくらし、身近なスポーツなどの都民施策にこそまわすよう求めていく」と述べています。