2006年8月30日(水)「しんぶん赤旗」
労働政策審議会再開へ
残業代不払い 解雇の金銭解決
ごり押しねらう厚労省
雇用関係のルールを定める労働契約法の制定や労働時間法の改定をめぐって中断していた労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)の労働条件分科会が二カ月ぶりに再開されることが二十八日、決まりました。厚労省は年内に報告を得て、来年の通常国会への法案提出をめざす姿勢を変えておらず、今後のたたかいが焦点となっています。
同分科会をめぐっては、六月二十七日の会合で、厚労省が示した中間とりまとめ素案や審議会のすすめ方に労働者、使用者委員がともに「意見が反映されていない」「中間まとめは拙速だ」と反発し、次回の日程も決められないまま中断に追い込まれる事態になっていました。
前代未聞の審議中断を招いたのは、厚労省が身勝手な素案をつくって審議をごり押ししようとしたことにあります。
ところが厚労省は素案を撤回する考えはなく、「来年の通常国会に関連法案を出せるようにすすめていきたい」(戸苅利和事務次官)として、来年の法案提出先にありきで審議をすすめる姿勢を変えていません。
戸苅次官は「労使がそれぞれ妥協あるいは容認できる線を見極めながら調整していく」と表明していますが、厚労省の素案は、雇用のルールや働き方を根本から揺るがす内容になっています。
何時間働いても残業代が一円も払われない制度(自律的労働時間)や、金銭を払えば解雇が自由にできる制度(解雇の金銭解決)を導入します。
日本経団連など財界・大企業が強く求めているもので、労働者の健康破壊をひどくし、不安定雇用への置き換えをいっそうすすめるものです。
労働契約法には、従業員代表などが合意すれば個別労働者の合意がなくても、使用者が労働条件を自由に切り下げられる仕組みも設けます。
使用者に都合のいい労働契約法にしかならず、賃金ダウンなど横行する身勝手な企業のリストラにお墨付きを与えかねないものです。
素案は一方で、残業代の割増率アップ(月三十時間を超えた場合は50%など)を盛り込み、労働側に配慮するような姿勢も見せています。これには使用者側が「コスト増を招く」と反発していますが、〇七年度の月間平均残業は十・五時間(毎月勤労統計)。製造業でも十六時間にすぎず改定の効果など及ばないのが現実です。なにより、労働時間の適用除外で残業代も払われなくなる制度を創設すると、割増率改定の意味などなくなってしまいます。
長時間労働の深刻さは変わらず、解雇はじめ個別労使紛争も多発するなか、労働者保護行政の原点に立ち返った労働法制の改正がおこなわれるのかどうか注目されます。