2006年8月30日(水)「しんぶん赤旗」
主張
教育基本法改悪案
憲法と世界の流れに反する
自民党総裁選候補の安倍晋三官房長官や麻生太郎外相が、総裁選後の臨時国会での、教育基本法改悪案の成立に執念を燃やしています。とくに、安倍氏は、教育基本法改悪を憲法改悪と一体でねらっています。
改悪案は、「慎重に」という国民世論を反映して、国会で継続審議となっているものです。
国民主権の原理
先の通常国会では、政府の改悪案には、憲法に背反する二つの大問題があることが、日本共産党の質問で浮き彫りになりました。
一つは、政府の改悪案が、憲法第一九条が保障した思想・良心・内心の自由をふみにじるという点です。改悪案は、「教育の目標」として、「国を愛する態度」など二十もの「徳目」を法律で決め、その「目標の達成」を義務づけ、子どもたちに強制しようとしています。
質問をきっかけに、いま各地で「愛国心通知表」を見直す動きが広がっています。「評価するのは難しい」(小泉首相)というなら、法案の道理そのものが成り立ちません。
もう一つは、憲法が教育の自主性、自律性、自由を強く求めていることとの関係です。教育基本法の一〇条はのべています。「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである」。政府の改悪案は、この「国民全体に対し直接に責任を負つて」という文言を削って「この法律及び他の法律の定めるところにより」に置き換えています。
国会の論戦で、この一〇条の改悪のねらいが、政府・文部科学省の裁量行政による教育内容への国家的介入を無制限に拡大し、合法化することにあると、明らかになりました。
安倍氏らは、「教育改革」といって、教育基本法改悪を強行しようとしています。しかし、マスメディアの総裁選をめぐるモニター調査でも、「教育改革」の課題として、「教育基本法改正案の早期成立」をあげた国民は、わずかで十二項目中十一位です。「全国学力調査の実施」をあげた人も少なく、下から三番目の十位です。
教育基本法には憲法の国民主権の原理が流れています。教育は一人ひとりの子どもの主権者としての「人格の完成」をめざしておこなわれるべきで、未来の社会のあり方は、そのような教育によって成長した未来の世代の判断にゆだねようというのが教育基本法の考えです。国策に従う人間づくりをねらう改悪案とはまったく正反対です。国民が求めるのは憲法と教育基本法を生かした教育改革です。
「人格の完成」という考え方は、世界人権宣言(四八年)に盛り込まれ、人類共通の原理として豊かに発展しています。子どもの権利条約(八九年)はのべています。「児童の人格、才能並びに精神的及び身体的な能力をその可能な最大限度まで発達させること」。こうした目からみて、国連・子どもの権利委員会は、日本の「競争教育」にたいして、政府に二度にわたる警告を発しています。競争に拍車をかける全国一斉学力テストは国際社会からの勧告にも、人類共通の原理にも反します。
国民の力で廃案に
日本の教育基本法を手本にして「学力世界一」になったという、フィンランドでは、競争主義を教育から一掃しています。学校と教師の自由と自主性を尊重し、「二十人」学級が当たり前になっています。
この秋、子どもたちの成長を願う国民の力で、教育基本法改悪を許さないたたかいを盛り上げましょう。