2006年8月29日(火)「しんぶん赤旗」

主張

葛飾ビラ弾圧判決

言論の自由、社会常識の勝利


 東京都葛飾区内のマンションに日本共産党の都議会報告などを配布した党後援会員・荒川庸生氏が住居侵入罪で不当に逮捕・起訴された葛飾マンションビラ配布事件で、東京地裁が無罪判決を出しました。

 政治的言論の締め付けをねらう一連の事件で弾圧を追認する不当判決が続いたなかで、司法が自由と人権を踏みにじる政治弾圧に加担するのでなく「『憲法の番人』としての司法の役割が見事に果たされた」(弁護団声明)、重要な勝利判決といえます。

ビラ配布は犯罪でない

 「この日は、民主主義、言論表現の自由がまた芽吹き始めた日です」―判決直後の集会で晴れやかにこう語った荒川氏を、支援者の大きな拍手が包みました。

 荒川氏がおこなったことは、休日の午後に、自由に出入りもできる民間分譲マンションで、共用廊下を平穏に歩き、各戸のポストにビラを配布したというだけです。

 日本国憲法第二一条は「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」としています。戦前の明治憲法が「法律の範囲内」でしか言論の自由を認めず、治安維持法などの弾圧立法で言論の自由を侵したことへの反省からです。

 だれもが自由にものを言え、だれもが自由にそれを取捨選択できることは、民主主義社会の根幹です。なかでもビラを配ることは、だれでもできるもっとも気軽な表現行為です。それを受け取る人の「知る権利」を含め、ビラ配布の権利はもっとも強く保障されるべきものです。

 憲法が認める言論表現の自由を正面から否定することはさすがにできない警察、検察権力は、荒川氏の市民として当たり前の行為を住居侵入罪という別個の犯罪にしたてあげようとしました。なんとしてもビラ配布を有罪にし、裁判所に「違法行為」と認めさせることがねらいでした。それによって全国で無数におこなわれている同様のビラ配布にまで有形無形の圧力をかけ、言論を委縮させることをたくらむ、徹頭徹尾政治的な言論弾圧だったのです。

 しかし判決は、このたくらみを退けました。ビラ配布のためのマンションへの立ち入りには「正当な理由」があると認定し、違法性についてはマンションの形態や個々の事例に応じて「社会通念を基準」に判断されるべきだとしました。荒川氏については、「住居侵入罪を構成する違法な行為であるとは認められない」として、そのビラ配布が犯罪行為ではないことを明確に認めたのです。

 言論表現の自由を否定し、住居侵入の罪を非常識なまでに拡張解釈して荒川氏を罪におとしいれようとした警察、検察のねらいを許さなかった判決は、憲法の掲げる基本的人権に合致し、社会の常識に沿ったものであるだけに強い力をもちます。検察は控訴せずに判決に服し、荒川氏の無罪を確定させるべきです。

権利を確立するたたかい

 葛飾事件のほかにも、大分県豊後高田市の日本共産党・大石忠昭市議の事件、国公法弾圧堀越事件、世田谷国公法事件などビラ配布をめぐり不当に起訴された重要な事件が各地で同時にたたかわれています。

 ビラ配布にたいする弾圧は、国政や地方政治の民主的改革を願う国民の要求と運動を抑えつけようとする攻撃にほかなりません。

 葛飾事件に続き、すべての裁判に勝利し、国民の要求と運動を発展させるための言論表現の自由と権利を確立するたたかいを、全国で広げましょう。


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