2006年8月27日(日)「しんぶん赤旗」

教育基本法守る 思い熱く

秋の国会へ国民的運動開始

労組など学習集会


 九月にも召集が予定されている臨時国会に向け、全国でたたたかいを巻き起こし、継続審議となっている教育基本法改悪案を廃案に追い込もうと二十六日、東京都内で労組、市民団体が学習決起集会を開き、運動をスタートさせました。

 主催は教育基本法全国ネットワーク、教育基本法改悪を許さない各界連絡会。東京・上野での宣伝後にかけつけた教職員や父母ら百五十人で会場はいっぱいに。「子どもの未来を閉ざす教育基本法は断じて許されない」とした集会アピールを拍手で確認しました。

 「教育基本法改悪法案を廃案に! 憲法・教育基本法を守り生かそう」を掲げた同集会で、各界連絡会代表の坂内三夫・全労連議長があいさつ。自民党総裁候補が侵略戦争を美化する歴史認識を示していることを批判し、「国民の信頼は決して得られないだろう。教基法をめぐるたたかいは正念場を迎えるが、改悪を阻止し、政治の流れを変える一歩にしよう」と呼びかけました。

 堀尾輝久・東京大学名誉教授、五十嵐仁・法政大学大原社会問題研究所教授が教基法改悪の問題点や狙いを話しました。杉井静子弁護士があいさつしました。

 連絡会事務局長の東森英男・全教書記長は、改悪法案を継続審議にした運動を確信に、国民的な宣伝・対話、署名、国会議員への要請、九月からの全国キャラバンや諸団体・個人への働きかけなど「これまでにやったことのないとりくみをすすめよう」と訴えました。

 「返信はがき付きのビラを十万枚作製。教職員だけの運動にしないで市民全体に知らせていく」(都教組八王子支部)、「九月から十一月まで週一回の宣伝を毎週続けていく」(出版労連)など会場からの発言で運動を交流。高校生も「うちらの声を届けよう」と文科省や政党に要請し、懇談すると語りました。


改悪案は民主主義の喪失

教育学15学会シンポ

 教育学関係の十五学会による教育基本法「改正」問題を考えるシンポジウムが二十六日、東京の立教大学で開かれ、四人のパネリストが教育基本法の改悪に反対する見解を報告しました。

 佐藤学・日本教育学会会長(東京大学教授)は「現行法、政府案、民主党案が並んだ。現行法は完成度がはるかに高く、首尾一貫性、教育的洞察の深さ、教育的役割、どの点でも古くない。今後さらなる議論を重ねるとともに、何らかの行動が必要だ」とあいさつしました。シンポには二百十人が参加しました。

 日本教育法学会の西原博史・早稲田大学教授は「政府の改悪案の狙いは教育の目的を『人格の完成』から、愛国心を中心とする特定の資質を教育の目標にひっくり返すものだ」と分析しました。

 日本教育経営学会の小島弘道・筑波大学教授は「(現行の)教育基本法は新しい学校経営構築のために、今なお進むべき確かな方向性や力強いメッセージを与えてくれる」と述べました。

 日本社会教育学会から発言した佐藤一子・東京大学教授は、戦後の社会教育法の先進性に着目し「それを支えた教育基本法の二条(教育の方針)および七条(社会教育)の全面改定は、戦後民主主義の喪失ともいうべき危機的事態だ」と強調しました。

 日本教育社会学会の広田照幸・東大教授は戦後社会の変化を分析し、政府案は「徳目を教え込むことで教育問題を解決しようという大胆不敵な暴論だ」と批判。「東アジア共同体構想が動きだす中、閉鎖的で内向きな国民をめざす方向は時代遅れだ」と発言しました。

 会場からは「子どもの権利は人権と重ねて理解すべきだ」など活発な意見が出されました。


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