2006年8月26日(土)「しんぶん赤旗」

葛飾ビラ配布弾圧事件 28日に判決

刑罰適用は憲法違反

静かにポストに投函しただけ


 東京都葛飾区のマンションで日本共産党の都議会報告などのビラを配った荒川庸生さん(58)が、住居侵入罪で不当に起訴された弾圧事件は、二十八日に東京地裁で判決公判を迎えます。十四回にわたった公判では、同事件が日本共産党の政治活動を狙った憲法違反の弾圧であることが浮き彫りになりました。(阿曽 隆)


 荒川さんは二〇〇四年十二月、葛飾区のマンションに日本共産党の都議会報告、区議団だより、アンケート用紙と返信封筒を配布しました。ビラ配布という憲法で保障された言論・表現の自由、政治活動の自由の行使を、東京地検は「住居侵入」だと言いがかりをつけ起訴したのです。

 しかし荒川さんは、平日の日中、マンションの正面玄関から入り、一人で静かにドアポストにビラを投函(とうかん)しただけ。物理的に閉ざされていない廊下などの共用部分に入っただけで、住居侵入罪にあたらないことは常識からみても明らかです。

 これに対して警察が行った捜査は異常なものでした。

 公判では、住民の一一〇番通報を受けた警視庁通信指令本部の貝原大介巡査長が出廷。一一〇番聴取のためのモニターに「共産党員?がビラのようなもの投げ込み」などと記し、管轄する警察署に注意を喚起する「重要ブザー」を押した、と証言しました。その結果、現場には八人以上もの警官が駆けつけ、亀有署の刑事・組織犯罪対策課の課長と同代理、警備課の公安係も含まれていたことが明らかになりました。マンションの実況見分も警視庁公安部が指揮しました。

 立命館大学法科大学院の松宮孝明(刑法)、市川正人(憲法)両教授が証人出廷。荒川さんのビラ配布は住居などへの「侵入」にはあたらず、刑罰を適用することは憲法違反になると証言しました。


荒川庸生さんに聞く

表現の自由守るため絶対に負けられない

 判決を前に荒川庸生さんに思いを聞きました。

 不当に逮捕され、二十三日間もの長い間勾留されました。先の見えない不安の中、接見した弁護士さんから、ガラス越しに「しんぶん赤旗」に載った記事を見せられました。妻が集会で支援の方たちに寄せたメッセージでした。

 「夫はこの弾圧は個人を超えた事件であり、今後の歴史の流れを左右する重大な問題であることを認識し、自らその渦中に身を置きたたかっています」

 これが私のたたかいの原点です。

 こうした家族・友人・地域の仲間や全国のみなさんの運動に支えられてここまで頑張ってくることができました。

 この間、反戦ビラをまいたことで逮捕されたり、「日の丸・君が代」に反対して教師が処分されるなど、民主主義や表現の自由に対する一連の攻撃が続きました。

 憲法に高らかにうたわれている平和と民主主義、基本的人権がないがしろにされ、言論・表現の自由が露骨に妨害されることを目の当たりにして、こうした流れが憲法や教育基本法などの改悪につながることに不安を感じます。

 だからこそ、知る権利、伝える権利としての大切な手段であるビラの投函(とうかん)行為を絶対に犯罪にしてはなりません。負けられない裁判です。

 宗教者として農協運動に携わってきた厳格な父のもとで育った私は、社会の不正義や不平等への怒り、困っている人へのいたわりや命を尊び、平和を愛する思いが思想形成の基盤となり、当然の帰結として日本共産党を支持するようになりました。平和な世の中で、だれもが平等に人生をまっとうできる社会は、日本共産党の政策でこそと信じたからです。

 この国に再びものをいえぬ暗闇をもたらすのか、言論・表現の自由を守るかの岐路を決する重要な裁判です。裁判所には公正な判断を心から願いたい。


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