2006年8月26日(土)「しんぶん赤旗」
主張
サラ金高金利
引き下げの社会的合意覆すな
サラ金などの高金利被害を防ぐための貸金業規制法改正に向けた動きが大詰めを迎えています。
異常な高金利で利払いに追われ、複数のサラ金に手を出す多重債務に陥り、生活が破壊され、破産や自殺にまで追い込まれる悲劇をくりかえさせない―その原点にたって、金利引き下げの実効ある対策をとることは、社会的な合意となっています。
身勝手な業界圧力
サラ金やクレジット会社のカードローンは利息制限法の上限金利(15―20%)に違反し、年三割近い高利をとっています。刑事罰のある出資法の上限金利が29・2%であることに乗じての高利貸しです。利息制限法と出資法の上限金利の差は灰色金利と呼ばれ、貸金業規制法が特例として借り手が自らの意思で支払うことを条件に認めています。
返済に追われ自殺した人の借金を再計算すると、正規の金利ならとっくに返済が終わっていたという例も多数あります。最高裁は灰色金利を基本的に認めない判断を相次いで示し、過払い利息の返還を求める訴訟も全国に広がっています。
金融庁が今回の法改正で灰色金利を廃止し上限金利を一本化することを打ち出したのは、その害悪が無視できなくなっているからです。
サラ金業界はこれに激しく抵抗し、高金利温存をねらっています。自民、公明の国会議員に献金攻勢をかけながら、規制の骨抜きを画策し、自公両党が七月に合意した「基本的考え方」には、少額・短期の融資に限って「特例」として高利融資を認める案が盛り込まれました。
今回の法改正に向けて議論を重ねてきた金融庁の「貸金業制度等に関する懇談会」(二十四日)では、この「特例」が案として示されましたが、業界代表以外の委員から例外なく強い反対論が出されました。サラ金側は金利引き下げまでの経過措置など別の「抜け穴」も提示しましたが、他の委員から「多重債務被害をこれ以上出さないという出発点で議論を重ねてきたのに話を元にもどすな」と厳しい批判があがりました。問題の経過をふまえれば当然です。
圧力は海を越えてアメリカからもかけられています。米金融業界が与謝野馨金融相に「上限金利を下げるな」という書簡を送ったのです。その言い分は「金利を下げればヤミ金がはびこる」という日本のサラ金業界口うつしのでたらめです。
米国では八〇年代からの「規制緩和」で、金利規制の緩和・撤廃が続き、結果として低所得層・経済的弱者を食い物にする高金利の消費者金融被害が全国的に拡大し大きな社会問題になっています。金融庁の調査でも、米国の破産件数は人口当たりで日本の倍以上です。米国の金利規制は「市場の失敗」を顕著に示しており、日本がお手本にするようなものではありません。米国の口出しで日本の政策を逆戻りさせることがあってはなりません。
違法行為重ねる業界
サラ金がはびこるのは高金利が許されているからです。それに実効ある規制をすることは「社会の落とし穴」をふさぐ第一歩です。
最近も貸付残高業界第一位のアイフルが業務停止処分を受けたのに続き、同第二位のアコムが過剰貸付規制を不当に逃れるなど違法行為をおこなっていたとして金融庁の立ち入り検査を受けました。法の不備や抜け穴を使ったこんな悪徳商法を一掃するためにも、社会の合意である上限金利の引き下げを、一切の特例なしに実現することが不可欠です。