2006年8月25日(金)「しんぶん赤旗」
先制攻撃 日本で議論
高官が公然と発言
米紙報道
【ワシントン=山崎伸治】米国の軍事専門紙ディフェンス・ニューズは最近、「先制攻撃、日本で議論」と題した東京特派員電を一面に掲載。北朝鮮のミサイル実験を受け、日本政府や軍需産業の間で先制攻撃能力の保有が公に議論されるようになっていると、危険な動きを報じました。
同紙十四日付は記事で、防衛庁の河村延樹防衛局計画課長が「本来、わが国の防衛のためには、敵の基地を攻撃する方がふさわしいかもしれない」と表明したと報道。河村氏は「空中給油機はないし、F15戦闘機はおもに防衛のためで、わが国には(北朝鮮を)攻撃する能力はない」と述べ、「将来わが国はそうした能力を持つべきだ。厳密には憲法で禁じられておらず、(持っていないのは)おもに政策上の選択によるものだ」と先制攻撃能力を持つべきだとの考えを強調したといいます。
また同紙は、日本では長年「よりおおっぴらな軍事的役割」について口にすることは「タブー」であり、「政治的自殺行為」だったと指摘。ところが「七月四日の北朝鮮のミサイル実験によってその議論が公のものになり、政府高官がますます、潜在的脅威に対して先制攻撃を行える兵力を構築する必要性について議論するようになった」として、麻生外相、額賀防衛庁長官、安倍官房長官が「敵基地攻撃能力」という名で先制攻撃につながる発言をしていることを紹介しています。
同紙は「日本国民の(安保上の脅威に対する)考え方が最初に変わり始めたのは、一九九八年に北朝鮮が長距離ロケットを日本の上空に発射した時だ」と指摘。一方で国民の世論は「より強力な防衛力を支持しても、先制攻撃を支持するところまではまだ至っていない」との米専門家の声も伝えています。
さらに、九日から十一日まで東京で開かれた第八回日米安全保障戦略会議に出席した米軍需産業の代表にとって、こうした議論は「喜び以上の何物でもなかった」と指摘。「皮肉なことだが、北朝鮮が日本の上空に発射したことが、日本の弾道ミサイル防衛(BMD)計画を加速した。さらに北朝鮮が七月にミサイルを発射したので、BMDを推進するきっかけを与えた」との米ロッキード・マーティン社の担当者の声を紹介しています。