2006年8月24日(木)「しんぶん赤旗」
中国南京法院
著者らに賠償命令
南京大虐殺 被害者ニセ扱い訴訟
南京大虐殺で家族を殺害された中国人女性、夏淑琴さんが、日本で出版された二冊の書物で「ニセ被害者」と決め付けられ、名誉を傷つけられたとして、著者らに計百六十万元(約二千二百四十万円)の損害賠償を求めていた訴訟で二十三日、中国の南京市玄武区法院(地裁にあたる)は著者側に、請求どおりの賠償と出版差し止め、朝日新聞、読売新聞や人民日報(中国)などへの謝罪広告の掲載を命じる判決を言い渡しました。
訴えられたのは、『「南京虐殺」の徹底検証』の著者、東中野修道・亜細亜大学教授と『「南京虐殺」への大疑問』の著者の松村俊夫氏、出版した展転社の三者。両書は事件について証言を続ける夏さんを「(本当の被害者とは)別人と判断される」「夏淑琴の体験談も…後から人為的につくられている」などと書いています。
訴状などによると、南京城が日本軍に包囲され陥落した一九三七年十二月十三日、多数の日本兵が城内の夏さん(当時八歳)宅に乱入。祖父母と両親、姉二人、生後数カ月の妹を殺害しました。母らは性的暴行を受けていました。夏さん自身も背中など三カ所を銃剣で刺され重傷を負いました。
被告の著者らが、原告本人への確認も現地調査もせずに、主観的に「夏さんは被害者ではない」と断定し歴史をわい曲したため、精神的被害を受けたとしています。
夏さんの裁判を支援している森典男弁護士によると、判決は夏さん家族の殺害を事実と認定、主張を全面的に認めたといいます。
夏さんが提訴したのは二〇〇〇年十一月。森弁護士によると、中国の裁判所が日本の被告に賠償の強制執行をできるかどうかは不透明だといいます。そのため夏さんは東京地裁にも東中野氏らを相手取って損害賠償請求訴訟を起こしており、ことし六月に第一回口頭弁論が開かれています。
夏淑琴名誉棄損裁判日本弁護団は、「日中友好は両国民が日本の犯した戦争の被害・加害の事実を認識し共有することからつくりだされる」として、「東中野氏らは真実を尊重し、控訴することなく判決内容を速やかに履行すべき」だとする声明を発表しました。