2006年8月21日(月)「しんぶん赤旗」

イスラエル 政権に国民の批判

大規模攻撃 犠牲者増大、多大な損失

“軍事攻撃反対”の声強まる


 【カイロ=松本眞志】国連安保理決議一七〇一に基づいて、イスラエル軍とレバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラとの停戦が十四日に発効しました。しかしイスラエルは十九日にレバノン東部を急襲し、緊張は続いています。


 イスラエル軍のレバノン侵攻は七月十二日、ヒズボラに拉致された兵士二人の奪還を理由に始まりました。英BBC放送(電子版)は同月二十四日、イスラエル国民の九割が侵攻を支持していると報じました。しかしイスラエルのメディアは早い時点で、紛争に対するオルメルト政権の対処に疑問の声をあげていました。

工場の操業停止

 イディオト・アハロノト紙七月十八日付は、レバノンへの大規模な攻撃にもかかわらず兵士奪還の見通しが立たず、ヒズボラが発射したロケット弾がイスラエルの軍艦を直撃する事態に、「オルメルト首相とペレツ国防相は混乱し、まごついている」との政治家の声を紹介。ハーレツ紙七月二十六日付は、「攻撃決定は適切な手続きを踏んだのか」との見出しで、オルメルト政権が強行した武力攻撃に疑問をぶつけました。

 戦闘が拡大するにつれて、イスラエル軍の犠牲者が増大し、八月に入ると一日の死者が二十人を超える日も出ました。ヒズボラ側からイスラエル北部に対するロケット砲攻撃も衰えを見せず、北部の各都市からの避難民の数も五十万人に達しました。

 カタールの衛星テレビ・アルジャジーラは十二日、紛争開始から一カ月でイスラエルの経済損失が二十二億ドル(約二千五百億円)に達し、ヒズボラのロケット砲攻撃によって六十の自治体で二十の工場と五千五百軒の家屋が破壊され、工場の七割が操業を停止したと報じました。観光シーズンにもかかわらず、ホテルの宿泊予約のキャンセルも続き、その損害は二千七百万ドル(約三十一億円)にのぼると説明しています。

政党などに変化

 人命の犠牲と経済的損失の増大にもかかわらず、オルメルト首相を中心とする治安閣議は九日、レバノン南部での地上戦拡大を決定。それまで政府の方針を支持してきた政党や市民団体に変化が表れました。紛争当初から政府を批判してきたイスラエル共産党を中心とするハダシュ、アラブ系政党のバラドなどの左翼に加えて、世俗派の左派連合メレツや市民団体のピースナウなどは、大規模な軍事攻撃で問題は解決しないとして即時停戦と外交解決を主張。「忍耐の限度を超える」「政府と異なる声をあげざるをえない」と反戦の立場を鮮明にしました。

 ただ、リクードなど主要政党からの批判は、もっと効果的な戦争でヒズボラを壊滅させるべきだったとの立場からのものでした。停戦後、「勝利」宣言したオルメルト首相に対し、国内では「拉致された兵士を解放できなかった」「ヒズボラのロケット砲攻撃阻止に失敗した」「ヒズボラを武装解除できなかった」と批判の声が上がっています。労働党の議員からは、同政権に対する紛争への対処にかんする調査委員会設置要求がつきつけられ、政権基盤の弱いオルメルト政権が揺さぶられています。


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