2006年8月20日(日)「しんぶん赤旗」

主張

消費税の目的税化

国民欺く「社会保障のため」


 財界や小泉内閣の閣僚、自民・公明の両党幹部が、しきりに消費税の増税と社会保障を結びつけた発言を繰り返しています。

 政府の「構造改革」の基本方針(骨太方針)は消費税の「社会保障目的税」化の検討を盛り込みました。

 その意図を政府税調の石会長が露骨に語っています。「(増税に)国民の納得を得るために(社会保障との)何らかの結びつけは必要だ」―。

消えた消費税収

 消費税導入のときも、税率引き上げのときも、政府は「社会保障の財源」を最大の口実にしました。消費税は低所得者ほど負担が重い、社会保障の財源にもっともふさわしくない税制です。しかもこの間、社会保障は切り捨てに次ぐ切り捨てで、政府は国民を裏切り続けています。

 消費税収はどこに消えたのでしょうか。消費税の導入・増税によって公的負担の面で最大の恩恵を受けたのは財界です。一九八九年に導入された消費税の税収は累計で百七十五兆円。この年以降、法人税率は42%から30%まで12%も引き下げられました。今年度までの法人課税の減収は合計で百六十兆円に上ります。消費税収の大部分が法人課税の減収に吸い込まれた形になっています。

 市場で力の強い大企業にとって消費税は、すべて価格に転嫁できる都合のいい税制です。法人税負担を減らした大企業は丸もうけ、その穴を中小業者と消費者が払った消費税で埋め合わせてきたということです。

 自民党政府は軍事費を膨張させ、聖域扱いを続けています。消費税導入前の八八年度と比べた軍事費の増加額の累計は十八兆円を上回っています。消費税収は法人課税の減収と軍事費の増加分の合計百七十八兆円の手当てに消え去った計算です。

 この構図は、消費税を目的税化したところで、何ら変わりません。

 国の社会保障関係費の約二十兆円は所得税、法人税、消費税などの税収や国債収入で賄われています。

 「目的税」の中身は、単に「社会保障に使いますよ」という宣言にすぎないやり方(現行の手法)から、道路特定財源のように制度として固定する方法までさまざまです。

 この点を政府はあいまいにしています。仮に社会保障の特定財源にしたとしても、消費税以外の財源がほかの分野に回されるだけです。

 政府・与党は、さらに大企業に減税し、大資産家の減税も続け、米軍再編に三兆円の出費を強行し、大型公共事業の無駄遣いを温存しようとしています。

 これらは、国民本位の財政改革のために真っ先に是正すべき課題です。消費税増税は事実上、こうした本末転倒のやり方を支える財源の供給源になるだけです。何より、政府・与党は先々まで社会保障の改悪を続ける方針を明確にしています。

 元大蔵官僚で財政に詳しい野口悠紀雄早大教授も経済専門誌で指摘しています。「『社会保障の目的税として増税する』という説明は、まやかし」「増税に対する抵抗を弱めるための『欺瞞(ぎまん)』に他ならない」

最悪の選択を迫る

 大企業が負担を免れる消費税を目的税にするのは、今でも欧州諸国と比べて軽い大企業の社会保障負担をなくす、隠れた大企業優遇策です。

 谷垣財務相は目的税化によって「財源なくして給付なし」を明確にしたいとのべています。「社会保障の低水準を我慢するか、それがいやなら消費税の増税だ」と国民を脅し、最悪の選択を迫る仕組みです。

 「社会保障のため」は国民を欺く議論です。


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