2006年8月17日(木)「しんぶん赤旗」

主張

プール事故

安全を確保し子どもに笑顔を


 埼玉県ふじみ野市の市営プールで小学二年生の女の子が亡くなった事故の後、文部科学省がまとめた全国のプールの自主点検結果で安全設備に不備・欠陥のあるプールが相次ぎ、夏休みのプールがつかえないという事例が広がっています。

 事故から二週間余。子を目の前で失ったご両親の悲しみに胸が痛みます。二度と再びこうした事故をくりかえさない対策を強く求めるものです。

無責任の連鎖

 暑い夏の日、近場で、気軽に利用できる公営プールは、住民にとってありがたいものです。健康増進、スポーツの振興のために自治体が税金をつかってスポーツ施設をつくることは大事な仕事です。住民も、公の施設だという安心と信頼をもって利用しています。安全確保は自治体の大きな責任です。

 ふじみ野市はプールの管理運営を民間委託し、日常の安全点検も、完全に業者まかせにしていました。市は安全の責任を放棄し、住民の信頼を裏切っていたのです。

 委託を受けた会社はビルメンテナンスが本業で、およそプール運営の技術的知識がある会社ではなく、市との契約にも反して、別の会社に下請けさせていました。現場は一人の下請け会社社員とアルバイトの監視員にまかせきりでした。アルバイトへの安全教育もしていませんでした。人の命をあずかっているという自覚などどこにもありません。

 毎年夏には水の事故が相次ぎます。海や湖、川なら、天候や自然のなかの思わぬ危険があります。しかし、プールは違います。遊泳のための人工の施設なのだから、構造上の欠陥や不備はあってはならないし、無くすことは可能です。

 吸・排水口が原因になってのプール事故はこれまでも頻発しています。国は、吸・排水口のふたはボルトとネジで固定すること、もしふたがはずれても吸い込まれることがないよう防止金具をとりつけることを「通知」していたといいます。しかし、ふじみ野市のプールは防止金具もなく、針金でふたを固定するという危険な状態が数年間にわたって続いていました。

 事故後の全国の学校プール、公営プールの緊急自主点検の結果では、安全対策の不備が二千三百カ所にのぼりました。これまでの国の「通知」はまったく形式的なもので、安全確保のための実効ある対策はとられないままきているのです。

 法整備がされていないために、国の安全規制に強制力がなく、安全管理基準も明確になっていないのです。政府が事故後につくった「関係省庁連絡会議」は緊急アピールを発表しましたが、安全確保をプール管理者(自治体など)の「自己責任」の問題とのべるだけで、国が責任を果たすという姿勢はありません。

 日本共産党は国会で、「通知」を出すだけでは安全確保ができないことを示し、自治体まかせにせず、国が安全措置の全国調査をし、対策を徹底するよう要求してきました。

「官」から「民」

 小泉首相が「官から民へ」と叫ぶもとで、自治体リストラを通じて多くの行政分野に民間が進出しています。つきつめれば利潤追求が目的の民間企業に「安全」まで明け渡していいのか―事故の大きな背景がここにあることも見逃せません。

 子どもは夏に大きく伸びます。真っ黒に日焼けした子どもたちの元気な笑顔をまもることは、おとなたちの責任です。


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