2006年8月13日(日)「しんぶん赤旗」

東京都 更迭・浜渦氏を参与に

石原側近政治の復活

共産党、きっぱり批判


 東京都の石原慎太郎知事が、強権的な都政運営に対する批判を浴び、昨年、更迭したばかりの腹心、浜渦(はまうず)武生・前副知事(58)を都参与に選任したことに、都庁内外から「側近政治を復活させるものだ」と、批判の声があがっています。(川井亮、岡部裕三)


 知事は七月二十一日の記者会見で、「(国に)都の意向を伝え、国側の本当の意向を探り、調整する能力のある人間はほかにいない」と浜渦氏を持ち上げ、参与への選任を明らかにしました。

 これに対し都議会では、自民党など与党が事実上了承しました。自民党のベテラン都議は「昨年、知事サイドから参与任命の打診があった時は、反対して見送らせた。今回は『とにかく辞令を出します』と強引だった。参与といっても常駐になってしまう。まずいよね」と、押し切られた経緯を振り返ります。

 浜渦氏選任をきっぱりと批判したのは、日本共産党だけでした。党都議団の吉田信夫幹事長は「浜渦氏は知事側近として非民主的、強権的な都政運営で、都政に混乱と停滞をもたらした。その責任を取り、副知事を辞職させざるを得なかった人物を、突然、参与として再び登用することは許せない」とのべました。

異常な都政運営

 浜渦氏は副知事在任中、石原知事が週二―三日しか都庁に来ないもとで、知事の“名代”として人事や政策全般を掌握、他の副知事の仕事にまで介入し、異常な都政運営を行ってきました。

 浜渦氏が更迭されたのは昨年、都施設「社会福祉総合学院」の運営問題をめぐり、民主党に「やらせ質問」を依頼していた問題でした。この時、設置された都議会の百条委員会(地方自治法にもとづく調査特別委員会)で、日本共産党などの追及や証言により、「質問依頼はしていない」とする浜渦氏の答弁が、偽証と認定されました。

 また、石原知事の威光を背にした専横ぶりも明らかになりました。意に沿わない幹部を左遷する、面会するには局長でも電話ではだめで「お手紙」を書かなければならない、局長は部下の書いた「お手紙」の添削までしている…。「恐怖独裁政治」といわれた側近政治に批判が高まり、昨年七月、知事もしぶしぶ更迭せざるを得なかった人物です。

 知事官房系の元局長は「偽証が認定され、副知事を辞めざるを得なかった人物を都参与に持ってくるのは、けしからん話だ。了承した自民党もおかしい」といいます。

 元部長は「また人事にも介入することになるのではないか。『お手紙』も復活するのか」。官房系局の職員は「みんな困っている。肩書は参与だけど、実質副知事だ」と語りました。都庁では「七月に発令された幹部人事には、浜渦氏の影がちらつく」との声も聞かれます。

関与が無制限に

 知事は昨年、更迭した浜渦氏を都の外郭団体「東京交通会館」の副社長に天下りさせ、都民の批判を受けました。それからわずか一年で、議会の議決が不要な参与という形で、都政に復帰させたのです。当面は副社長の職を返上させないまま参与も兼任させ、二重の報酬を支払います。

 では、浜渦氏は都参与として、一体何をするのか――。

 浜渦氏の委嘱分野は「国、関係機関との交渉及び連絡・調整」とされています。しかし、国と交渉や調整が必要な施策は、都政のさまざまな範囲に及び、浜渦氏の都政への関与が事実上無制限になりかねません。

 議会関係者は「浜渦『復帰』は専横政治の再来だと、みんないっている」と明かします。

 「革新都政をつくる会」の相楽茂治事務局長は「強権的な都政運営の中心だった浜渦氏の『復帰』で、重要な政策決定が都民から見えないところで、進められる危険を感じる。今やるべき都民の暮らしを支える仕事が、いっそうなおざりにされるのではないか」と話しています。


 都の参与 都規則にもとづく非常勤の特別職で、専門的な立場から「知事の策定する重要な施策について知事に進言し、または助言する」ことが役割とされています。報酬は月額三十三万九千円。石原知事は浜渦氏のほか、志方俊之・元陸上自衛隊北部方面総監ら五氏を選任しています。


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